第32話
「それでは、次回、またお会いしましょう」
「またな」
淺埜さんはキャプチャーソフトの録画停止ボタンを押して、録画を終了させた。ずっとしゃべり続けていたせいなのか、少し口の感覚がいつもと違っている。
淺埜さんはキッチンへ向かうと、一リットルのペットボトルに入ったコーヒーとコップを二つ持って帰ってくる。
「お疲れさま。今日はありがとね」
「いただきます~」
コーヒーを淹れたコップを俺は受け取ると、のどを潤す程度に飲む。口の中に少し苦みが広がった。
*
帰宅後。俺はア〇マのアニメ放送のコメントを楽しみながら、現実逃避に勤しんでいた。特に嫌なことがあったというわけではないが、やはりアニメを見ることは楽しい。
アニメのオープニング、エンディングでの訓練されたコメント欄は一体感があって、見ていて気持ちがいいし、なにしろ面白い。
もはやこれまで、浄化される、ここは世界一汚いコメントが流れる場所~♪、一生奈良素敵大、は本当に訓練されていて、見ていて楽しい。
みんなでコメを楽しみながら、アニメを楽しむということは、アニメの楽しみかたの一つだと思う。
それにしても、ごくごく民のコメントを打つ速さは異常だと思う。アニメのエンディングで「ごくごく」でコメント欄が埋まるけど、あれは準備しているのだろうか。
ちょうどアニメライブの最終話を迎え、きれいに浄化されたあと。インターホンが鳴った。
「晩ごはんできたよー」
「はーい」
いつも通りにご飯を食べて、俺はお皿を洗っていると
「今日、女の子のおうちに行ってたでしょ」
「ん?」
「私が大学から帰るときに、女の子と一緒にいたよね? 今日、帰ってくるの遅かったみたいだし」
急なことにお皿を落としてしまいそうになる。俺はとりあえず、今洗っていたお皿の水を切った。
「別に瑞葉さんの思っている関係ではないですよ。第一、あの子、淺埜さんですし」
「あの子、淺埜さんなの!?」
俺がネタばらしすると、とても瑞葉さんは驚いていた。地味ッ気の強かった淺埜さんが、普通におしゃれな女の子になっていたのだ。当然のことと言える。
「なにがあったの?」
「さぁ。大学生活を充実するものにするためなんじゃないですか」
ゲーム実況をしているということは、一応伏せておく。俺はこれ以上、追及のできないように
「お邪魔しました」
と言って、自宅に戻った。
お風呂に入り、なんとなくゲームハードのほうを探していると、スマホが振動した。
淺埜さんからだった。
恋愛成就の神様にお願いした結果 広野ともき @sizen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます