第30話
ゴールデンウィークは志野の面倒をみたり、バイトしたり、講義を受けたりしていたら終わっていた。
だんだんと夏の暑さが顔を出してきていて、昼間はかなり暑くなってきている。そろそろ半そでを解禁しようかと迷っていた。
大学の講義が終わり、あち~と思いながら大学の中庭でおにぎりとお茶の昼食をとっていた。食堂で食べていないのは、がっつり混雑時だからだ。密集地帯にはあまり行きたくない。
「お久ぶり、糸吹くん。となり座ってもいいかな?」
だいぶあかぬけた淺埜さんが立っていた。大学生活に慣れてきたのか、かなりフランクで話しやすい雰囲気になっている。本来はこういう人なんだろうか。
淺埜さんは俺のとなりに座ると、サンドウィッチを食べ始めた。
「それで動画とか撮影してるのか?」
「う、うん、まぁね。この話し方も練習のうちの一つだから」
淺埜さんは少し顔を曇らせた。つまりうまくいっていないのかもしれない。
「それで、どうなんだ。ゲーム実況のほうは」
遠まわしで言うのも面倒くさい。直接、はっきり言ったほうが、相手も言いやすいこともある。
「あんまりなんです。いざ喋ろうと思っても、なかなか言葉がでなくて…」
最初にゲーム実況がしたいと言われて、正直できるのだろうかと思っていたが、その通りだったか。
まぁ、いきなり一人でしゃべれと言われても一般人にはできないことだから、当たり前なことだ。
「そのゲーム実況に関して、あの、お願いがあるんですけど……」
淺埜さんは少しの間を置くと
「私とゲーム実況してくれませんか?」
「は?」
顎が外れそうになった。
*
「お邪魔しま~す」
「えっと、汚い部屋ですが」
「いえいえ、きれだと思いますよ。少なくとも俺の部屋よりはきれいですよ」
「そ、そうですか」
苦笑いで返された。そりゃそうか。一人暮らしの男子の部屋なんかと比べられても比較になんないし。
それと、こうも簡単に女子大生の部屋に入ってもいいのだろうかというのが俺の頭の中で浮かんでいる。
だが、淺埜さんは気にした様子もなく、お茶を淹れてきてくれた。俺だけが意識しているというのはなんだか恥ずかしいため、頭の中からその邪心を追い払った。
淺埜さんは俺に「お茶です」と言って渡すと、次はゲーム実況の用意を始めた。
テキパキと準備を進めていく淺埜さんはあっという間に準備を終えた。
「あの、ゲーム実況を一緒にしてって言っておいて、あれなんですが、二人でできるゲームを持っていなくて……」
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