第27話

「なにニヤニヤしてるんですか」


 俺は呆れたように瑞葉さんに言い返した。瑞葉さんにこのことを聞かれたら、確実に瑞葉さんはいろんなことを聞いてくるだろうし、あまり志野に嫌なことを思い出させたくない。


「だって、こういうのって慎司くんが好きな世界ではあるんでしょ」


 ピクリと志野の肩が反応したような気がした。

 ただ、俺にはそういうシスコンの毛はないし、志野にはブラコンの毛がない。


「そんなのがあるわけないじゃないですか~。シスコンとかあるのは、二次元の世界だけですよ。もしかして、瑞葉さん、俺らの世界に興味がおありなんですか」


 ふぅ、と志野が安心したように肩が下がった。あえて軽く冗談交じりな感じで答えるほうが効果はある。

 ラノベとかだと、主人公が慌ててシスコンじゃないし、とか言って逆にシスコンを疑われてしまう。なんだよ、主人公、ハーレムハーレムシスコンしやがって。

 ヒロインもヒロインだよ。なんで急に顔を赤くしたりすんだよ、上目遣いを多用すんなよ! 可愛すぎて現実リアルに戻れなくなってしまうだろ! 

 だからといって、三次リアルでやられると気持ち悪いというのは、なんだか矛盾している。難しいところだ。


「アニメとかには興味ないよ。でも、大学の友達がそんな世界があるって言ってただけだから」


 その友達はどこから聞いたのかが気になるのは心の中にしまっておく。もしかしたらコミケとかに出ている人と知り合いなのかもしれない、と思ってしまうのはヲタクあるあるの悪い妄想癖だ。


「瑞葉さん、早くご飯食べましょ。今日は志野に大学を紹介するんですから」



 大学のキャンパス内を瑞葉さんと志野と俺で周り、最後に学食で昼食をとっていた。

 今日は瑞葉さんも講義がないらしく、付き合ってくれた。俺よりも一年長く大学にいるため、俺よりもいろんなことを知っていて、丁寧に志野に紹介してくれていた。


「お兄ちゃん、私、学食がこんなに安いとは思っていなかったよ」


 朝のことを吹っ切ることができたのか、切り替えることができたのかは分からないが、志野は素直に驚いていた。

 おいしいとは言えないが、めちゃくちゃ不味いというわけでもない。腹を満たすためなら必要十分といったおいしさのため、俺もよく使っている。

 俺はいつも通りのうどん、瑞葉さんはパスタ、志野はオムライスを頼んでいた。

 志野に「お兄ちゃん、昔からうどんが好きだね~」と言われ、志野に

「志野だって昔からオムライス好きだろ」と返すと志野は「オムライスはおいしんだから、しょうがないじゃん」と子供のように返してきて、おいしそうにオムライスをまた一口食べていた。

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