第22話
「やっぱアルバイトって疲れる~」
欲しいもの、つまり、ガジェットを買うためにアルバイトを始めた俺は、部屋に寝転んだ。
アルバイトを始めて約二週間。アルバイト、大学の講義があると時間が経つのが本当にあっという間のように感じる。
俺はフローリングの上でしばらくゴロゴロしたあと、この前組んだパソコンを起動した。特にすることがあるわけでもないが、無性にパソコンに触りたくなってしまう。
フラフラとヘッドフォンなどオーディオ関連の情報をネットで収集していると、コンコンとドアがたたかれた。
時刻は午後五時。
瑞葉さんが晩ごはんができたと呼びに来る時間にはまだ早い。特にインターネットで商品を発注した覚えもない。
ご近所さんか。いや、このアパートには、俺と瑞葉さん、加えて俺が住んでいる部屋の反対側に上下で二人住んでいるだけのはずだ。だから、互いの生活音はほとんど聞こえないはず。となると、誰だ。前野さん、淺埜さんは俺の家を知らないし。
恐る恐る俺はドアを開けると、背丈はいたって同じくらいの女子には普通ぐらいで、胸は控えめ、ショートカットの女の子が立っていた。
「久しぶり、お兄ちゃん」
「え、なんで
我が妹の糸吹志野は「おじゃまし~す」と部屋に入っていった。
混乱している俺は、志野に続いて部屋に戻り、母さんに電話をかけた。
「母さん、なんで志野がこっちに来てるの!?」
『大学が見たいんだって。あんただったら大学紹介できるでしょ? あ、ゴールデンウィーク中、志野をよろしくね。それじゃ、お母さんは晩ごはんの用意があるから~』
「……」
いやいや、急すぎるだろ。来るとしても、先に連絡をするのが普通だろ。瑞葉さんのときといい、母さんは情報を送ってくるのが遅すぎる。困るのはこっちだというのに。
……あれ、ゴールデンウィーク中って言ってたよな。その間、ずっと俺の部屋に泊まるってこと前提だよな。俺の部屋に、志野の分の布団なんてないし、女子に必須と言われているリンスなんてない。買わないといけないのか……。
「お兄ちゃん、パソコン組んだんだ~。しかも、また高そうなもの探してる。昔から変わらないね。ガジェットが好きなの」
「なぁ、志野。ゴールデンウィーク中、俺の部屋に泊まっていくのか」
「うん。お邪魔するね、お兄ちゃん」
「志野の分の寝具とかないぞ、俺の部屋」
「じゃあ、私がお兄ちゃんと一緒に寝たらいいんじゃない? 昔は寝てたよね」
「いつの頃の話だよ。俺が幼稚園の時の話じゃねえか」
コンコンとドアがノックされた。
「ちょっとでてくるわ。そこらへんに荷物を置いとけ」
「は~い」
俺はドアを開けた。
「慎司くん、晩ごはんは何がいい? 今から買い出しにいくんだけど……。慎司くんん、もしかして女の子連れ込んじゃったりしてる?」
真顔で瑞葉さんに尋ねられた。まぁ、こうなることを、頭の隅では考えてはいたが。まさか、本当になるとは……というより、普通はなるよね。
「妹ですよ。妹の志野」
「え、妹?」
「ん、なに~。私の名前が聞こえたけど。お兄ちゃんの知り合い?」
志野がススス―と玄関までやってきた。とりあえず、瑞葉さんのことを紹介することにした。
「この人は、瑞葉さん。大学の先輩、隣の部屋の人で、親戚の人」
「ああ、瑞葉さんですか! いつも兄がお世話になってます」
「本当に妹さんなのね。私のことは瑞葉でいいからね。よろしくね、志野ちゃん」
「はい、よろしくお願いします。瑞葉さん」
「志野ちゃんって今日来たのよね」
「昨日から居たら、もう瑞葉さん知ってるでしょ」
「移動とかもあったから疲れてるんじゃない? 今日はあそこで外食にしましょ! この前行った温泉に行きましょ!」
「え、温泉ですか!? 私、温泉大好きなんです!」
「それなら、今から行こっか。早く行ったほうが混んでないし」
「はい! ほら、お兄ちゃん、早く準備して行くよ」
……意気投合するの早いな。俺もそっちのほうが嬉しいんだけど。だって、もし互いがちょっと合わなかったら、板挟みになるのは俺だし。だから、意気投合してくれてうれしいんだけど。
それにしても、女子って、こんなに仲良くなるのが早いのか。普通に友達にしか見えなくなってるんですけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます