第18話

 俺と淺埜さんが遅れて、ラップトップ売り場に行くと、前野さんはラップトップで試し打ちをしていた。


「糸吹君、どんなパソコンがいいの? なんか C〇re i7 っていうのがいいって書いてあるけど」


 前野さんの頭の上に?がのっている。


「i7 もいいけど、動画制作とかの重い作業しないんだったら、i3 i5 ry〇en3 ryz〇n5 辺りで十分。で、学生なら持ち運びが多いだろうし、軽めのラップトップのほうがいいから……。これなんかどうだ」


「え、あ、うん。ありがと」


 前野さんの頭の上にある?が一つから三つに増えたような気がする。ちょっと飛ばしすぎたか。でも、パソコンを選ぶ基本中の基本だからな。これぐらいは常識になってもらいたいところだ。

 淺埜さんも、俺が言ったパソコンを前野さんと一緒に見ていた。

 M.2 256GB メモリ8GB 2.1GHz 4コア、それでいて六万円台。なかなかの高コスパなラップトップだと思う。っていうか、こんだけもりもりで六万円台てすごいな。

 俺の使ってたラップトップなんて約二十万だぞ。まぁ、i7 だから仕方ないところあるけど。でも、HDD1TBだから、起動がすごく遅かった。自作PCを組もうとしている諸君、Cドライブは絶対にSSDにしろよな。さもなければ起動して、さくさく動くまで三分もかかる地獄を見るぞ。

 128GBのSSDで十分だから。1TBもいらないから。とにかくCドライブだけは、SSDにしとけ。言ったからな。


「俺がオススメするのは、i5かry〇en5 のSSD512GB、メモリ8GBだな。俺、ちょっとパソコンパーツ見てくるから」


 俺がそういうと、淺埜さんが後で行くと目線で言ってきた。それに俺は、うなづくと、パソコンパーツコーナーに足を運んだ。


 自作パソコンコーナーで、一番目を引くように販売されているのは、グラフィックカードだ。最近、eスポーツが流行っているためだろう。

 でも、俺にはずらりと並んでいるグラフィックカードよりも、目を引くものがあった。

 そうそれは


「R-18のマーク、だと」


 エロゲ売り場ののれんの前には、俺が気になっているエロゲのポスター。第四章のヒロインが王様椅子に足を組んで座っている。

 この前、オープニングが発表されて、俺も何度も再生した。猫と戯れたり、添い寝しているシーンは、可愛すぎて、やばかった。

 やばい、にやけが……。


 俺は気を引き締めて、ニヤケ顔をただした。


 俺はもう十八歳。こののれんをくぐる資格はある。というこはだな。行かないという選択肢はないんだよ!

 俺はのれんをくぐった。



「サイコーだったぁ」


 知らないエロゲがたくさんあって、どれもプレイしたくなった。世界は広いと感じた。

 なんで美少女ゲーム業界がだんだんと縮小していっているのかが分からない。

 泣ける作品、笑える作品、人生のためになる作品、頑張ろうと思える作品、いろいろなジャンルの、作った人たちの伝えたいことが分かるのが美少女ゲームだと思う。

 美少女ゲーム業界が縮小しているのは、やっぱり新規ユーザーがあんまり増えていないのも原因なんだろうか。あと、美少女ゲームが、ただただエッチするゲームだと思っている人が多いからだろうか。

 これを見ている人たちの中にもいると思う。美少女ゲームって、エッチしている作品だと思っている人が。俺はその認識をかえてほしい。

 これは失礼かもしれないが、俺はエッチシーンはおまけだと思っている。美少女ゲームのメインはシナリオだ。

 エッチは、ヒロインを攻略したあとの、ヒロインたちの気持ちを確かめ合うシーン。だから、そのシーンが苦手だったら、飛ばしてもかまわないと思っている。これには賛否両論ある思うがが、どうしたって苦手な人だっている。それはしょうがない。

 だけど、その素晴らしい作品をプレイしないというのは、もったいなさすぎる。

 いろんな人に美少女ゲームを知ってもらって、業界を盛り上げたい! そして、美少女ゲームがなくなってほしくない。俺はそう思う。


「糸吹君、どこに行ったんだろう。あ」


「(!!)」


 そんなことを思いながら、のれんをくぐり、自作パソコンコーナーに戻ろうと思ったら、目の前には、淺埜さんと前野さんがいた。


「よ。良いの見つかったか」


「……」


 前野さんは無言で、顔を赤くしている。


「興味あるのか? 面白そうな作品があったから、紹介するぞ」


「そういうわけじゃない」


「そうか。俺、今から自作パソコンパーツを見に行くから~」


「むぅ」


 無理にオススメしたりはしない。それが節度ある布教の仕方だ。

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