第16話


「おはよう」


「あ、うん。おはよ……。すいません、どちらさまですか?」


「初めまして、加納瑞葉と言います。慎司くんの友達です。よろしくね」


「……よろしくお願いします」


 午前十時。

 昨日、駅前で待ち合わせをすることにした俺と前野さんは、時間ぴったりに集合した。

 時間ぴったりに集合できたのは素晴らしいんだが……。

 俺の横には、なにを考えているかが分からない瑞葉さん。前野さんの後ろに隠れるようにいる、俺の知らない女の子。

 どうして二人も増えているんだ。


「意外とリア充してるんだ、糸吹君」


 仲間だと思っていたのに、という目で前野さんは俺のことを見てくる。

 違うんだ。瑞葉さんは親戚なんだ、と言おうとすると、瑞葉さんが先に口を開いた。


「前野さんの後ろにいる方のお名前は?」


「は、はい! あ、淺埜花楓です! よ、よろしくお願いします!」


 かなり緊張している様だ。俺まで緊張してきてしまう。

 だけど、瑞葉さんはそれを優しく受け止めた。


「よろしくね、花楓ちゃん。私のことも瑞葉でいいからね」


「が、頑張ります」


 前野さんの後ろに戻ってしまった。人見知りなんだろう。

 だけど、なんでだろう。前野さんと淺埜さんのキョリが非常に近いと感じるのは。

 でも、それを考えはじめたら、あっという間に時間が過ぎてしまう。


「とりあえず、行こうぜ!」


「わー、なんかキャラに合ってないこと言ってる」


「う、うるさい」


 前野さんに突っ込まれて、瑞葉さんと淺埜さんにクスクスと笑われながら、駅に向かった。


*【警告】ここからにマニアックな話が出てきます。ご注意ください。


 家電ショップ、いや、俺らがよくお世話になっているであろう場所の前。ここは、リア充が集まるショッピングセンターの中にある。

 周りには、海があり定番のデートスポットがたくさんある。ネットで調べていて、本当にびっくりした。失礼かもしれないが。

 リア充聖地の中にあるヲタが集まるショップ。普通に信じがたい。

 まぁ、俺たちはそういった場所に来ていた。


「わぁ、なんかパソコンがいっぱいあるー」


「なんかすごい」


「(うんうん!)」


 瑞葉さん、前野さん、淺埜さん、それぞれが似たような反応を見せて、少し混乱している中、俺は、若干興奮した足取りで入っていく。


「なにしてるんだ? ほら、早く、見にいこうぜ」


「なんか、糸吹君が目をキラキラさせていて、気持ち悪い」


「(うん)」


 前野さんの後ろで、少し気を遣いながらもうなづく淺埜さん。ちょっとメンタルにくる……。

 仕方ないよね。だって、本当に楽しみなんだもん!

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