第2話
高校を卒業した俺は、この春から大学生となる。
俺が合格した大学は遠いため、親元から離れた生活。
最初は寮に住み予定だったが、抽選に落ちて、アパートを借りての一人ぐらし。本当は、防音性の高いと言われているマンションに住みたかったが、お金の都合上、無理だった。一応、アパートでできる防音対策をしようと、用意はしてある。近所迷惑になるのが、一番してはいけない。
俺はそんなことを思いながら、移動中の新幹線で、お昼ごはんを食べていた。
新幹線から降りて、電車に乗り換えて、駅からしばらく歩いたところに、俺が住むこととなるアパートはあった。
安っぽくはないが、かといって高級感があるわけでもない。荒れているわけでもない。いたって、普通のアパートだった。
不動産屋さんから事前に貰っていた鍵を使って、部屋に入る。ワンルームの部屋が広がっていた。
広がるっていうほど大きくはないが、大学生活を送るならば、必要十分といった感じだ。というより、これ以上の贅沢は言えないような気がする。
ただ、トイレとバスは別々というのは、こだわらせてもらった。ユニットバスだと、窮屈で、落ち着かないからだ。
荷物は明日に届くため、特に今日はすることがない。最近は、隣人の人と接するという社会でもないため、俺もそれにのっとって、何もしないことにしている。
俺はフローリングに寝転がって、これからどうなっていくのかを想像してみた。
とりあえず、部屋の隅っこには、念願の自作パソコン。一応、お金は用意してある。それで、ちょっと高いけど4Kのモニターを一台置いて、それに、テレビのチューナーをHDMI、パソコンをDPで接続。
プリメインアンプは、価〇コムで、売れ筋で一番上なのを買って、光ケーブルでチューナーと接続、パソコンはUSBで接続して、40kHz以上出力対応のヘッドフォンを買って……。
「うう、体痛い」
ゆっくりと起き上がり、見たことのない天井だなと思い、しばらくボーっとしていて思い出す。引っ越したということを。
あたりは薄暗くなっていて、もうすぐ完全に日が暮れてしまいそうだった。
俺はとりあえず、夜ごはんを調達しに、出かけて行った。
「はぁ、まさか、弁当が売り切れてしまっていたとは……」
俺が行ったスーパーには、菓子パンしか売っていなかった。とりあえず、今日はこれでしのごう。
にしても、明日の朝ごはんを買い忘れてしまった。今から、また買いに戻る気力もない。またしても、ため息がもれる。
「初めまして。もしかして、お隣さん?」
「はい。
俺が部屋の鍵を開けようとしたら、隣の部屋の方がちょうど出てきた。美人な方で、優しそうな雰囲気を持っている。
「もしかして大学生?」
「はい。〇〇大学に春から通います」
「それなら私の後輩ね」
にっこりと笑うお隣さん。その笑顔に、俺は惹かれてしまいそうになる。
「私の名前は、
「俺、留年していないんで、一つ上で合ってますよ。加納さん」
「加納さん……。ちょっと固いなぁ。瑞葉って呼んで。これから、お隣さんになるんだし」
そんなことを急に言われましても。初対面の人の名前を呼び捨てにできるほど、俺のメンタルは強くない。
「瑞葉さん」
「顔、ちょっとだけ赤くなってる、かわい。糸吹くんが恥ずかしいなら、しょうがないね。ほんとは、さんづけじゃないほうが嬉しいんだけど」
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