第5話
年が明けた。今は一月一日の日がまだ明けていない時間帯。周りはまだ暗く、ダウンを着ていても寒い。俺はカイロを強く握ったが、そんなことをしても温まらない。
「早く、来ないかなぁ。めっちゃ寒いし」
寒さに耐えきれなくなり、軽くジャンプをしたり、走ったりする。少しずつ息が上がってきた。
「ど、どうしたの?怪しい人に見えるよ。そんな風にニット帽とマフラーと手袋をして動いていたら。私、声かけようか迷ったよ」
振り返ると、少し引き気味の天がいた。俺はニット帽とマフラーと手袋を外した。息が上がって、この格好だと少し暑くなっていた。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「急にきたね。私の方も、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
俺たちは互いにお辞儀をした。これぞ日本文化。ハッピーニューイヤー。
「それにしても、寒いね。明日香ちゃん、まだかな。もう少しで時間だけど」
「まぁ、朝早いし、しょうがないだろ。来なかったら、LINEして、起こせばいいし」
「そういうものなのかな。ぎりぎりに起きても、女の子は着替えとかに時間がかかるよ」
「俺の着替えは三十秒だけど」
「男の子は速いね」
俺たちは明日香を待つ間、適当に話しをしながら、明日香が来るのを待っていた。
しかし、なかなかやってくる気配はなく、集合時間から十分以上経っていた。俺の温めた体が冷えてきて、再び重装備になっている。
「ごめ~ん、寝坊しちゃった。あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」
走りながらやってきた明日香は、ハァハァ言いながら、新年のあいさつをした。なんだか余裕のないあいさつだ。
「よろしくね~」
「よろしく。みんな揃ったことだし、出発するか。余裕を持った待ち合わせでよかったな」
「うん、そうだね」
もちろん、こんな朝早くに集まったわけは、初日の出を見るためだ。近くの空港にある公園で、初日の出を見る。三人ともそこで初日の出を見るのは初めてだ。だから、どんな風に見れるのかが楽しみだった。
「さとる、普通に怪しいよ」
「寒いからしょうがないだろ。体を温めておいたけど、冷えてしまったし」
明日香にまで突っ込まれた。俺の格好はそんなに怪しいのか。服装を気にしない男なら、普通にすると思うんだが。
俺は服装を変える気はなく、そのまま歩き続けた。そして、空港の近くにある公園についた。
あんまり人はいなかった。多分、これからけっこうな人が来るんだろうな、と簡単に予想できた。だって、とっても初日の出を見やすいところだもん。俺たちはとりあえず見やすいスポットを探した。
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