第4話
俺が天から貰ったのは手袋だった。明日香が天にプレゼントしたのはニット帽だった。プレゼント交換のあとは、ずっとゲームをしていた。途中からは明日香のお姉さんが参入して、盛大に盛り上がっていた。
「あれ、もうこんな時間。私は、明日香ちゃんの家に泊まるから大丈夫だけど、河崎くんはそろそろ帰ったほうがいいんじゃないかな?」
プレイしていたUN〇が終わり、天が自然の流れで時計を見て言った。今の時刻は二三時五十九分。もうすぐ日付が変わろうとしている。
「そうだ、さとるも泊まろう!明日から学校休みだし。あれ、さとる、聞いてるの?」
俺はかばんからある小包を取り出した。お洒落に包まれている。俺は日付が変わった瞬間に、天とタイミングを合わせて
「明日香」「明日香ちゃん」
「「誕生日おめでとう!」」
と言った。言ったあとに、俺はそれを明日香に渡し、天も天が選んだ誕生日プレゼントを渡した。
「え、うそ!あ、ありがとう、さとる、天ちゃん」
すでに明日香は涙目になっている。突然のサプライズに驚いているんだろう。
「まず、天ちゃんのから開けてもいい?」
「うん、いいよ。これからもズッ友だよ」
明日香は慎重に天からのプレゼントを開ける。天からのプレゼントはハンカチだった。俺にはよく分からないが、ちょっと高級なハンカチらしい。明日香は飛び跳ねて喜んでいた。
「次はさとるのだね。じゃあ、開けるね」
明日香は俺が渡したプレゼントを丁寧に開けていく。
「さとる、これはなに?」
明日香は中に入っていたDVDに首をかしげていた。
「すいません、下のテレビを使ってもいいですか?」
俺はちょうどやってきていた明日香のお母さんに訊いた。
「あら、いいわよ。聡くん、今日はうちに泊まっていったら。もう遅いし」
「いえ、大丈夫です。明日香がこれを見るのを見たら帰るんで」
俺は「お借りします」と言い、明日香、天を連れて、リビングのほうに向かった。
レコーダーにDVDを入れて、再生の準備をする。隣には「何が始まるんだろう、楽しみだなぁ」と明日香がつぶやいていた。
「すいません、部屋を暗くします」
俺は部屋の照明を落として、リモコンの再生ボタンを押した。
ビデオの再生が始まり、穏やかなBGMが流れると、明日香が生まれたときの写真が映った。そのあとには、小さいときの写真から順に流れていく。セミを捕まえて笑顔の写真、こけて泣いている写真、初めて自転車に乗れたときの写真、小学校の入学式の写真、中学の卒業式の写真、いろんな思い出の写真が流れていった。
そして、写真が流れたあとにはBGMが消えて、明日香の家族、一人一人のビデオメッセージ、天のビデオメッセージ、最後に俺のビデオメッセージが流れた。この順番は、明日香の家族、天と相談して決めたものだ。最初は俺が最初で、天、明日香の家族の順番だったが、明日香の家族が「聡くんは明日香が一番大切な人だから、最後は聡くんで〆て」と言われて、この順番となった。
ビデオが終わり、俺が立ち上がろうとすると、明日香は俺と天を抱きしめた。
「ありがとう、みんな。ありがとう」
明日香は思いっきりの笑顔で泣いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます