第6話
やっとの思いで俺たちは初日の出を見るスポットを見つけた。太陽を正面から見ることのできる、最高のスポットだ。
「やっと見つかったね」
「うん、なんかもう疲れたよ。私」
「あー、休憩」
俺はもう眠い。なんかちょっと気分がすぐれない気がする。滅多に早起きをしないせいだ。ああ、ちょっとふらふらする。
俺は地面に座り、目を瞑り、しばらく意識を手放した。
「ねぇねぇ、さとる。もうすぐで初日の出だよ」
ゆらゆらと揺らされて、俺は少しずつ目を開ける。目の前には明日香がいて、その
奥では寒そうにカイロを握りしめている天がいた。
空も少しづつ明るくなってきていて、俺の気分もさっきよりはかなりよくなっていた。
「さて、初日の出を見るか。明日香」
「うん。一緒に見よ」
俺は立ち上がり、天の隣に立つ。天はゆっくりと顔を俺のほうに向けた。
「もう、大丈夫なの? 早起きは慣れなかった? 」
「うん、まぁ、そんな感じ。新年早々、こんなんだったら、今年は心配かも」
俺たちは適当に話をしながら、日が昇ってくるのを待った。
「わぁ、きれい」
「きれいだね」
「oh」
俺は初日の出の美しさのあまりに言葉を失ってしまっていた。急に東の空が赤くなり。朝日なのに夕方みたいにオレンジ色になり。あっという間に夕方から朝になっていくような感覚。これが、自然なのか……と浸かってしまった。
「本当にきれいだったね」
「うん」
「……」
「このあとは、みんなで初もうでだよね」
「うん。そうだよ」
俺はあまりの美しさに、未だに言葉を失っていた。ほとんど記憶のないまま、気付いたら、神社に俺はいた。
「ここは」
「あ、やっと気が付いた」
明日香がとなりで俺の腕をつかんで、温まっていた。そして、隣には俺のことを見つめている天がいた。そして、周りからの目線。特に男子だけで初もうでに来ている集団からの目線は痛かった。
その目線から耐えながら、俺は神様に伝えることを考える。だが、考え終わる前に、順番が回わたしってきてしまった。
二礼二拍手一礼。
俺はとりあえず、去年の感謝と今年もよろしくお願いします、ということを伝えて、その場を去った。
「じゃあ、おみくじをひこっか」
明日香を先頭に俺たちは、おみくじを引く場所に向かう。
ここの神社は、先におみくじを引き、書かれている番号を巫女さんに伝えて、くじの結果と引き換えに百円を渡す方式をとっていた。
「じゃあ、いっせーのっで!」
「うわ、俺、吉」
「私は、大吉! やったー!」
「わたし、小吉」
天以外、なんとも微妙な結果だった。
そして、あっという間に冬休みが終わった。
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