パワーバランス

「戦争、戦い、喧嘩、争いというのは、両者の間のパワーバランスが変化した時に起こるのかもしれな。国家間でも、家庭でも、個人間でも」エイスケは言った。


「絶対的な上下関係、力の差がある時は、双方がその関係に満足しているし、下が上に逆らうことも出来ないだろう? でも、上にいた者が少し弱って、反対に下の者が成長して力を付ければ、パワーバランスの均衡に変化が生じて、争いになるんだ。組織でも、夫婦間でも、親子間でもよく起こる現象だね」


「なるほど…、確かにそれはあるわね。でも、それが国家間であっても起こるわけね」ユキナは答えた。


「そうだよ。今なら戦えるーっていう感じで、それまで溜まっていた鬱屈や不満が出てくるんだ。個人の集合体が国家でもあるのだから、そういう論理は成り立つだろう?」


「そうかもしれないわね。話が大きくなり過ぎて、少しピンとこないけど、国家と言ったって、それも個人の集まり、パワーなんだものね」ユキナはモーニングコーヒーを飲んでひと息ついて、マンションの上空の青空を見上げた。

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