選択

夏休みも終わって学校が始まった、毎年のことながら宿題をやらずにきた俺は沢山叱られた

しかし別にそんなことは辛くなかった、勉強するくらいなら叱られた方がマシだとさえ考えていた。


家に帰るとタバコの匂いがしたこの匂いがする時は決まって母親の機嫌が悪い時だ、だいたい兄弟の誰かが怒られる、多分今日は俺だろう、学校から宿題をやってないと連絡されたのだろうな


「アンタ、宿題やってなかったのね!!何回あたしが宿題しなさいって言ったと思ってるの!」


そう言って俺を何回も叩く、叩かれて痛いけど別に悲しくはなかった、いつもの事だ、黙っていれば勝手に気が済んで終わるそう思って我慢していた、ただ毎回俺を殴った後に母親は言う


「あんたのためを思って叩いてるのよ!あたしの心の方が痛いんだから!」


そう言って母親はタバコをふかしながらキッチンへと向かっていった、怒られるようなことをした俺が悪いし叩かれるのも我慢できるけど、自分の行いをなんでも正当化しようとする、この人の姿勢が嫌いだ。


俺は怯えながらこちらを伺っていた下から2つ目の弟を無視して部屋に戻った。


あれから何事もなくいくらかの時間が過ぎたある日学校に行くと周りの反応が冷たかった、挨拶したら返してくれるものの一緒に遊んでくれる人がいなくなっていた、まぁ気のせいだろと思ってそれから何日か過ごすが元に戻ることは無かった、学年でいちばん多いと言っても10人のクラスで1人だけ孤立した、これが小中一貫校なので中学卒業まで続くと考えるとどうしようもない焦燥が胸に湧いた。


そんな中でも健気に頑張って毎日学校に行っていた、しかし急に姉が学校に行きたくないと言って母親と口論を始めた、理由はいじめられてるから、だそうだ母親が原因を聞くと分からないという、俺は関わって余計に母親に怒られたくないので無視して学校に行った

ホームルームの時間の前に何やら校門が騒がしかった覗いてみると母親が姉の髪を引っ張りながら無理やり学校に連れてきたのだ、それを見た先生が止めようとして色々揉めているようだった。


その日の昼休み1人で無視されるのが始まってから日課となっていた読書をしていると先生に呼び出された、応接室という初めて入る教室に呼び出された


「お前、お母さんはいつもあんな感じなのかな?」


姉の担任の先生は聞いていきた


「そうですね、機嫌が悪かったらあんな感じですね」


「そうか、何か困ったら先生に言うんだぞ」


俺は驚いた、あれを見ても何も行動しないのかと、それと同時に俺がクラスメイトに無視されていることを告げても頼りにならないんだろうなと諦めた、その後何事もなく開放された俺はまた読書に戻った。


その日の帰り姉の同級生に絡まれた


「お前いつも独りやな!かわいそー!友達おらんのやろ!そりゃそうか!あいつの弟やもんな!!」


3人グループのガキ大将が馬鹿にしてくる


「そうやけど、なんで姉ちゃんいじめてるの?」


そう聞くとガキ大将は答えた


「あいつが習字の時間に俺の服に墨汁かけたんや、謝らんかったからいじめてる」


その話を聞いて俺はまぁそりゃしかたないかと思ってそうなんですねと答えて逃げるように早足になってその場を去った


悔しい、姉を馬鹿にされて自分もバカにされているのに何も言い返せない自分が悔しかった歯を食いしばりながら家に帰った。


それからというもの、毎日のようにガキ大将は俺をバカにしてきた、毎日苦しみながら逃げ出した。

そしてある日僕は弟を殴った、

理由は弟が部屋に勝手に入ったから、それだけだった、イジメのストレスを正当化して弟にぶつけた、その時は嫌なことを忘れて自分は強いと思えた、きそれからことある度に弟に暴力を振るった、その時の俺は自分の嫌いな母親と同じことをしていることに気が付かなかった。


ある日夕食の後に父親に呼び出された


「お前弟の嫌いなところ言ってみろ」


そう言われた俺は嫌いなところを並べた

自分の考えを口に出さないところ、すぐ泣いて自分のやりたいことをさせようとするところ、ひとりじゃ何も出来ないところ、他にも沢山でてきた、あらかた出し尽くした俺に父親は言った


「そこは俺も嫌いやあいつの悪い所、やけど殴るのだけは我慢せろ、どれだけバカカス言ってもいいけど暴力はするな、わかったか」


そう言って真っ直ぐ俺の目を見る父親の目は初めて見るくらい真剣だった


「わかった」


そう言って話が終わった後に父親は色んな話をしてくれた、こういう時に聞く昔暴走族だった時の話や子供の頃に親に怒られた時の話、幽霊を見た話やバンドをしていた時の話

などの、たくさんの話を聞くのが俺は好きだった。


そんな事件がありつつも時間は流れ、いじめはエスカレートして行った、それが俺は悔しくて何か仕返しをしてやりたいと思っていた。

たまたまクラスのひとりが学校にゲーム機を持ってきていた、いいチャンスだと思い体育の着替えの後誰もいない教室でこっそり盗んでしまった。


それから昼休みになってゲーム機を持ってきていた子が慌て始める、いい気味だと思いながら見ていた、当然先生に言える訳もなくその日は何事もないままみんな家に帰っていった


それからしばらくしてどうやら犯人は俺であるとバレたらしい、俺にそれを知らせたのは、家に帰ったら香るタバコの煙だった、母親はこれまでにないくらいに怒った内容はあまりにも支離滅裂で完全には分からなかったが、盗んだことよりも母親に恥をかかせたことの方が頭に来ていたようだった。


顔中をボコボコに腫らしながら相手の家に謝りに行った、なんで取ったのか理由を聞かれたがいじめられて腹いせでと言うのは惨めだったので羨ましかったから盗んだといったらまた母親から相手の親の前で殴られた。


そんな事件もありつついじめはさらに強くなったが俺は中学生になった、強制部活動に入ることになっていままで帰りの時くらいにしか絡まれなかったガキ大将にさらに絡まれるようになった。


部活はとてもきつく走り込みが特に嫌いで俺はサボり癖があったので部活を理由をつけてサボるようになっていた、それでさらに嫌われて行った。


部活をサボって家に帰ると父親と母親が喧嘩していた、別に喧嘩するのは珍しいことでは無いのだが今回のは特に酷かった、話を盗み聞く感じ、父親が仕事をやめたことこの家には多額の借金があること、俺の性格がクズであるのは父親のせいであると言ったことを母親が父親に向かって責め立てていた、父親は色々反論して母親に向かって出ていけ、帰ってくるなと告げた、そして母親は家を出た、

俺は別にいつものことだろうと考え普通にその日をすごした。


翌日母親はいつもどうり家におり弟たちと俺は家を出た、姉はいじめからにげるように別の中学校に行っていたので家を出る時間は俺たちより随分早かった。


その日も部活をサボって帰って夕食の時間になるといつも一緒に食べていたはずがそれぞれで勝手にしてと親に言われてみんなバラバラに食べるようになった、今思えばこの時からこの家族はおかしくなり始めたのだろう、

そんな日々が変わらず続いた。


しばらくして中学生2年生になった、3年生だったガキ大将が卒業したことでいじめも少しは和らいだ元々仲が良かった友達が2人いるのだがその2人のおかげで、そこそこみんなとの仲を修復できた気がする、だけど元のようにとは行かず、自分のしてきたことも含めて友達にはなれないだろうなと悟った、それでも今までに比べて無視されないだけで満足していた。


中学3年生の前の春休みに唐突に家族全員集められた、久しぶりにまともに家族全員で集まった

しばらく沈黙が続いたが意を決したように母親が喋りだした


「私たちは離婚しますあなた達で話し合ってどっちについて行くか決めなさい、お母さんは引っ越します」


「どっちについて行ってもいいけど、お前たちが離れ離れになるのだけは許さないから話し合って決めなさい」


両親のそんな言葉を聞いて俺は全然驚かなかった、なんならやっとかとさえ思った、当然悲しくもなかった、さてどっちについて行くのが現実的かと考えたら母親だった父親は好きだけど、あれから職につかずに稼ぎもないから職に就いてる母親について行くのは当然の流れだった。

そんなことがあって俺は中学3年生という1番不安定な時期に転校することになった。

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