第2話 中編



「また喧嘩か、別れればいいのに、同棲なんだから」


 私の住むマンションの駐車場で、訳のわからない小さな事でカップルが喧嘩をしている。側を通る人もため息交じりの呆れ顔だ。私も不愉快だが、これをたまたま目撃した、同じマンションに住む若い女性と話すようになり、挨拶も笑顔で交わすようになった。

「プラマイゼロってところだろうけれど」

中学生のように睨み付ける事はぜず、肩を落として喧嘩の横を通り過ぎる日々が続いていた。そんなある日


「あれ? 二人ともすごくにこやかだ」


 不思議に思い、たまたまあの女性がいたので、ちょうどいい話題だと話しかけた。

「きっと結婚なさるんでしょう、二人ともに指輪がありましたから」

「そうなんですか、僕は全く気が付きませんでした。さすが女性ですね」

「彼女、急に美しくなりましたから・・・」


 羨むように言った人に

「いえ、あなたの方が美しいですよ」とすぐに返せなかった事を、私は数日間後悔していた。が、急に


「二人ともウプシロン株で亡くなった? 」


保健所の人から教えられ、このマンションも大規模な消毒と検査対象になってしまった。


「誰も感染者がいなかった、良かった! 」

住民もマンションの持ち主も管理人も、それは喜んだ。今まで会ったことのない人同士が明るく話す様になり、私も色々な人から声をかけられるようになった。

「あなたたちは恋人なの? 」

「いえ、そうでは・・・」

「いい感じじゃない? きっと結婚しても上手くいくわよ」

複数の人から言われたが、どうも彼女もそうらしく、二人ともぎこちなく、でも

自然な成り行きでデートをするようになった。


 そうして、近所を二人で歩いていた時だった。とても高級な大型車が、路上駐車していた。

「この車、いつもここにあるの。通学路だから危ないって近所の人が言っているんだけれど、本人が全く聞く耳を持たないみたい」

「警察には? 」

「小学生の父兄が言ったらしいのだけれど、警察から言われると、しばらくは有料駐車場に止めてという事を繰り返しているみたい」

 出来ればこのマンションの一室に二人で住み、子どもが出来ても小学校も近くて良いと話すまでになっていた。

それから数日後だった。

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