1.4 新しい人生が始まった

 言われた通りに道をまっすぐにいくと、ザ・市場って感じのゲートがあった。教科書で見たことがあるような、青空の下に各々の商店がテントを出して、わやわやしている感じの市場だ。少し覗いてみよう。

 ゲートをくぐると、別世界に来たようなにぎやかさだった。

 そのにぎやかさに圧倒される。いろんな人が思い思いにお店を回って楽しんでいる。おとぎの国に来たような感覚になる。錦市場に来たような感覚になった。行ったことがないけれど、多分こんな感じなんだと思う。

 少しのぞいてみようと思って入ったけど、市場を一周することにした。市場と言ってもお祭りみたいな感じだから、いつもしているかは分からないけど、たぶんこういう日は掘り出し物が多く見つかる。事前のリサーチは次の市場でうまく買い物をするのに必須なのだ。

 人を避けながらも、サササと流し目で売り出しているものを見ていく。キャベツ、じゃがいも、カブ、玉ねぎ、といった野菜がたくさん売られていて、たくさんの人が買いに来ていた。「ここの玉ねぎはうまいよ。なんてったって、うちが栽培しているんだからね! さぁ、買った、買ったぁ」と自信満々に宣伝していた。こういうのは世界共通なんだなと思ったり。

 野菜コーナーを抜けると次は調理器具がたくさん売られていて、そこにも主婦がたくさん群れていた。こっちの世界にも調理器具のブランドがあるのかもしれない。ブランドと言ってもまだ世界規模じゃないんだろうけど、なんだかローカルなブランドというのは憧れる。そのあとはお菓子コーナーや服飾、工具コーナーという風に、ある程度まとまりはあるものの、市場という通りに混沌としていた。

 一通りに市場を見終わって満足した。久しぶりにこのような活気のある人混みに入ったような気がする。いつもは憂鬱な人混みに入っていたから、新鮮だ。

 最初の目的の役所に向かう。これだけにぎやかな市場があるのだから、それなりに大きい町なんだと思う。もしかしたら今日だけかもしれないけど。とにかく役所に行っていろいろと聞くしかない。

 市場のにぎやかな音が聞こえなくなったあたりに役所はそびえたっていた。そう、そびえたっていたという表現が正しい。役所がけっこう大きいからだ。建つという表現では少し足りない。

 もっと小さなこじんまりとしていた役所を想像していたが故に入るのがためらってしまう。この街はけっこうな大都市なのかもしれない。にぎやかだったのは市場くらいなのに、驚かされる。住宅もそこまで多くなかったのに。

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