第13話 「産業展示場」の「駐車場」にて


■ 「産業展示場」の「駐車場」にて


 ――シュウとロナルドはケイを案内役として「屋内展示場(片付け作業が行なわれている)」や「建物の裏側にある搬入口や倉庫」、「戦車に打ち破られたガラスで出来た壁(規制線が張られてある)」やらを回ってみせた。

 そして色々な話を聴き終えたシュウとロナルドは「駐車場」へと戻って来ては「白いバン」へと乗り込むと、「後部スペース」にて潜んで(ひそんで)いたユウキが声を掛けて来た。

「先輩……、どうでした?」

「――結論を言うと、“手掛かりは無し”だ!」

 シュウはそう言い遣ると、ユウキへと「携帯型のデータ記憶装置(監視カメラの映像データが入っている)」を示してみせた。

「それは?」

「『監視カメラ』の映像データが入っている」

 ――と、シュウが尋ねた。

「ユウキの方こそどうだった? 何か不審な点はあったりしたか?」

「いえ、こちらも特に何も……。大型のトレーラーが何台か行き来をしていただけですよ」

「そうか……」

「それと、ダオさんから『(監視カメラによる)自動車追跡システム』の検索結果が入りました」

「どうだった?」

「結論を言うと、“テロドスを乗せた車が何処に走り去ったのかは分からなかった”――だ、そうです」

「本当か?」

「ええ。なんでも“データが壊れていて追跡出来なかった”そうですよ」

「…………」

 シュウは黙ってみせていた。

 ――と、「助手席」にて座るロナルドがシュウへと尋ねた。

「そういう事は“良くある事”なのか?」

「いや、『監視カメラ』が設置されていない“田舎に逃げた(から追跡不能になった)”のならともかく、“データが壊れていた”と言うのはな……(聞いた事がない)」

 シュウは少しだけ困惑をした。

 そして少しだけ“頭の中”の整理をしては、ハンドルを握りながらに言い遣った。

「さて……、これから一体どうしたものか……」

「これから本部に戻って『監視カメラ』の映像分析をするんじゃないんですか?」

「まぁ、そうなんだがな……」

 言っててシュウは“少しウンザリ”してみせていた。

 何故ならシュウは「事務作業」が余り好きではないからだ。

 ――と、ロナルドがシュウへと言った。

「シュウ……」

「ん?」

「『ポートラル港』へと行かないか?」

「「!?」」

 シュウは尋ねた。

「『ポートラル港』? ここの荷物の運び先か?」

「そうだ」

 頷いて後、ロナルドは言った。

「オレは“ここの連中”が“テロドスと繋がりがある”と考えている」

「「!?」」

 シュウは問うた。

「何故そう思う?」

「『女子トイレ』へと駆け込んだ『オレンジ色した髪の女』が居ただろう?」

「ああ、居たな」

「彼女は“シュウの顔を見てトイレへと駆け込んだ”向きがある。恐らく彼女は“シュウの事を知っていた”んじゃないのか?」

 ――対してユウキがこう言った。

「そりゃあシュウ先輩は有名ですからね! 知っていたって不思議じゃありません!」

「だが“オカマの方”は“シュウを知らない”ようだった……。連中は“ポートラルの外”から来ているからだ……。それはシュウも感じただろう?」

「ああ、そうだな……」

 先程シュウとロナルドで“聞き込み”を行なっていた際、半数以上が“シュウの事を知らない”といった様子であった。

 けれども一部の者達は“遠巻きにシュウの事を警戒するように見ていた事”をシュウは感じ取ってみせていた。

 ――ロナルドは言った。

「彼女は何故“シュウの事を警戒”した? ――昨日ここで『戦車の暴走事件』が発生をした。だから多くの(ココの)メンバーは“また警察が来たのか”としか捉えなかった……。――“彼女と他のメンバーとの違い”は何だと思う……?」

「…………」

 寸間(すんかん)して後、シュウは言った。

「“ボクとテロドスが接触した事を知っているのかどうか”――とか?」

「そうだ……。少なくともオレはそう思う……!」

「「…………」」

 シュウとユウキは互いの顔を見合わせた。

 ――と、ロナルドは言った。

「オレは“ここの連中”が“テロドスと繋がりがある”と考えている。そして“テロドスとの繋がりを示す証拠”が“何処かにある”と考えている……」

「「…………」」

「仮にもし、“証拠を処分した後”ならば、彼女がオレ達を“警戒する必要”は無かったハズだ……“オレ達の案内を”オカマにさせた”のは何の為だ?」

「“時間稼ぎ”か……? ――つまりキミは“テロドスとの繋がりを示す証拠”が“『ポートラル港』にあるんじゃないか”と言いたいワケか?」

「そうだ」

 ロナルドは頷き、そして言った。

「先程の聞き込みにより得られた情報によると、フェリーは今日の昼頃に『キンペイ港』へと向けて出発をする……。だからオレは『テロドスに繋がる重要な何か』が“船で運び出されてしまう”その前に、『積み荷』を検め(あらため)るべきだ――と考えている……」

「「…………」」

 ――「テナンカンパニー」による『世界の車両展』の次の開催地は「十二国」の首都、『キンペイ』である。

 そして積み荷は「フェリー」にて運ばれて、二日後の朝に『キンペイ』へと到着する事(予定)になっていた。

 故にロナルドは“手遅れになってしまう”その前に、“積み荷の確認をしたい”と考えた――というワケである。

「…………」

 少しの間、シュウは考えた。

 そして、言った。

「よし! それで行こう!」

「良いんですかっ!?」

 思わずユウキはツッコんだ。

 どうにも“ロナルドに流されている”気がしたからだ。

「何だユウキ? 不満があるのか?」

「い、いえ……、そういうワケでは無いんですが……。ただ、今のはロナルドさんの“憶測”ですよね?」

 ――ロナルドは言った。

「確かにユウキ君の言う通りだ。全てはオレの憶測に過ぎない……」

「「…………」」

 ――と、シュウが言った。

「ユウキ……」

「はい……」

「(産業展示場から)回収した『監視カメラ』の映像分析は大事だけれど、今は“ロナルドの提案に乗る”んじゃ駄目なのか……?」

「…………」

 言われてユウキは困ってしまった。

 そして、言った。

「そう、ですよね……。船が出港してしまっては手遅れですよね……。“どんな証拠”があるのか分かりませんが、優先順位を誤りました。スミマセン……。自分の考えが足りませんでした……」

 この時ユウキはなんだか“自分が生意気を言ってしまった”みたいに感じており、「しょんぼり」としてみせていた。

 ――そして、そんな「ユウキの顔」を見てからに、

「「…………」」

 と、シュウとロナルドは「何とも言えない気持ち」になっていた。



■ 「ポートラル港」へと向かいながらに


『ブーーーーン……』

 ――シュウが運転する「白いバン」は『ポートラル港』へと向かっていた。

 ちなみに、ロナルドは「助手席」に、ユウキは「後部スペース」に座っていた。

「…………」

 ――そんな中、「サイドミラー」を見ていたロナルドがシュウへと“意味深”にこう言った。

「シュウ……、“後ろの車”に気付いているか?」

「ああ……。デカい『キャンピングカー』だろう?」

「?」

 言われてユウキは「モニター画面」を見てみると、確かに“後方”には「キャンピングカー」が存在しているのが見えていた。

 ――シュウは問うた。

「何時からだ?」

「さっきの場所(産業展示場)を出てからだ」

「テロドスの差し金(さしがね)か?」

「いや、尾行のやり方がシロウト過ぎる……。恐らく『世界の車両展』のスタッフの“独断行動”と見て良いだろう……」

 ――シュウは尋ねた。

「それで……? IPPO的には“こういう場合”はどうするんだい?」

「そうだな……」

 寸間置いてみて後に、ロナルドはシュウへとこう問うた。

「ここの近くに“大き目のトイレ”がある施設は在るか(あるか)?」

「ああ、それなら暫く走った道沿いに『大きなショッピングモール』が存在している」

「よし、だったら“そこ”に行くとしよう……」

「そこに行ってどうするんだい?」

 ――言われてロナルドは“笑顔”で言った。

「“話し合い”をするだけさ。トイレの中で仲良くな♪」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る