第12話 「産業展示場(メッセメッセ)」へと向かいながらに


■ 「産業展示場(メッセメッセ)」へと向かいながらに


『ブーー~~ン……!』

 ――現在シュウの運転する「白いバン(改造済み)」は昨日まで『世界の車両展』が開かれていた「産業展示場(キンペイ市郊外に存在している)」へと向かって走っていた。

 ――と、「助手席」にて座るロナルドがシュウに対して話を掛けた。

「シュウ、どうして『産業展示場』へと向かうんだ?」

「テロドスは昨日、『世界の車両展』へとやって来ていた……。彼は『スポーツカー』に乗っていたから“車に全く(まったく)興味がない”ってワケでも無いんだろーけど、それでもテロリストが“ワザワザ人の多い場所に現れる”とは思えない……!」

「――つまり“何か理由があるハズだ”と?」

「ああ、例えば……“誰かに会いに来た”とかね……♪」

「…………」

 シュウは言った。

「――仮にもし、テロドスが“誰かに会う為”に『産業展示場』を訪れていたのだったとしたら、テロドスは“海から上がった”その後で、『産業展示場』へと“向かった可能性がある”って思うんだ。――もしもそうであるならば、テロドスは『産業展示場』の監視カメラに“映っている可能性”が高いと思う……!」

「なるほど……。奴がもし“『誰か』と映っていた”とするならば、奴が“何をしにこの国へと来たのか”も見当が付く――そういうワケだな?」

「ああ、そういうワケだ……!」

 ――そして後、シュウ達は『産業展示場(通称メッセメッセ)』へと到着をしてみせていた……。



■ 「事務室」にて


『トン! トン!』

「「「?」」」

 ――『産業展示場』の「事務室」の中に居たスタッフ達は“ドアをノックされた事”に気が付くと、“そちらの方”へと目を遣った。

 ――すると、

『ガチャッ!』

 と、ドアが開けられてみていては、

「やあ、オハヨウ♪」

 と、シュウが姿を現していた。

 ――それを見て、

「シュ、シュウさんっ!?」

『『『ざわっ!』』』

 と、「事務員の女性」が声を上げ、ちょっとした“騒つき(ざわつき)”が発生をした。

 ――直後、(ロナルドを廊下に残した格好で)シュウは「事務室の中」へと入って来ては、「警察バッジ」を示しながらに皆へと言った。

「特別警察のシュウだ。ちょっと“聞きたい事”があるんだけれど、構わないかい?」

「「「…………」」」

 皆、「(何なんだろう……?)」と思っては、互いの顔を見てみせた。

 ――そして後、先程「シュ、シュウさんっ!?」と反応をした「女性」に対し、周りの者が「お前がシュウの応対をしろっ!」と“手振り”でもっては促すと、

『(すっ――!)』

 と、「女」は立ち上がり、シュウへと向いては尋ねてみせた。

「あの……、いったい何の御用でしょうか……?」

 ――すると、シュウは言った。

「――実は今、“とある事件”の捜査でここへと来たんだが、『監視カメラ』の映像を見せて貰っても構わないかい?」

「……それは昨日の戦車(暴走事件)の件ですか?」

「いや、それとは“別件”なんだけど、どうだろう……?」

「…………」

 ――そこで女は、

『(ちらり……)』

 と、“上司の方”へと顔を向けると、上司は「(よし! さっさと案内してしまえ!)」と、身振りでもって応えては、

『(コクリ……)』

 と、「女」は頷いて後、シュウに対してこう言った。

「分かりました……。『監視カメラ』の映像は『警備室』に保管してありますので、今から私が案内します」

「ありがとう。助かるよ♪」

 シュウは言われて微笑んだ。

 ――一方、「女」の上司に当たる「事務室長」は、

『ピッ!』

 と、「内線(電話)」を使ってみては「警備室」へと取り次いでいた。



■ 「警備室」にて


『トン! トン!』

「はい、どうぞ」

 ――言われてシュウが、

『ガチャッ……!』

 と、「警備室」のドアを開けてみせると、そこには「若者警備員」が立っており――、

「ワァオ! 本物のシュウさんだ!」

 と、“笑顔で出迎えて”くれていた。

 ――そしてその一方で「中年警備員」は“イスへと座ったまま”の格好で、

「『事務室』からは既に連絡を受けてるよ」

 と、“ぶっきら棒”に言って来た。

 ――それを受け、

「それでは私はこれで……」

 と、「女性事務員」はそう言うと、

「ここまで有難う。お仕事頑張ってね♪」

「はい……♪」

 と、軽くお辞儀をしてはその後に「警備室」を後にした。

 ――と、「若者警備員」がシュウへと言った。

「初めましてシュウさん、お会い出来て光栄です! 自分、シュウさんのファンなんです!」

 ――この時「若者」はシュウに対して“握手を求めて”みせており、対してシュウは、

「ありがとう。キミのように正義感の強い人がファンでいてくれて嬉しいよ♪」

 と、言い遣って、“握手をして”みせていた。

 ――と、そんな中、

「ん?」

 と、「若者警備員」が“ロナルドの存在”に気が付いて、シュウに対して尋ねてみせた。

「あの……、あちらの方(かた)は?」

「ああ、彼は……」

「――オレはアルメリアからやって来た、IPPOのロナルドだ」

「「!!?」」

 言われて二人の警備員は驚いた。

「IPPOだって!?」

「マジっすか!? IPPOって実在したンすね! 映画の中だけの存在だと思っていました!」

 この時“シュウには興味無さそう”にしていた「中年警備員」までもがロナルドに対して食い付いていた。

 ――それを見て、

『(むぅ……)』

 と、シュウは少しだけ“嫉妬(しっと)をして”みていては、

「オホンッ!」

「「「?」」」

 と、露骨に“咳(せき)”をして、それから話を“進めて”みせた。

「あー、ボク達が今日ここへと来たのは『監視カメラ』の映像を見せて欲しいからなんだけど……」

「え、ええ……。連絡は既に来ています……! どうぞ、コチラへ……!」

 ――「若者警備員」はそう言うと、二人の事を“モニターの前”へと促した。


 ――一方その頃、

「…………」

 「白いバン」にて“待機”を命じられていたユウキは一人、「後部スペース」の中に居て、「モニター画面」を眺めてみていた。

 ――ちなみに、この「白いバン」の車体の外側には幾つもの「カメラ」が設置されており、ユウキは“車の中”に居ながらに“車の外”を観察する事が出来ていた。

 ――そして今、

『ブーーーーン』

 と、数台の「大型トレーラー」が「荷物(車)」を積んでは“何処か”に対して“出発”しては、

『ブーーーーン……』

 と、その一方で、「荷物を降ろしたトレーラー(トラクターヘッド部分のみ)」が「産業展示場」に対しては(荷物を取りに)“戻って来ている”のが見えていた。

 ※(ちなみに、本作における「トレーラー」とは、「牽引車(トラクターヘッド)」+「付属車両(トレーラー)」の事を指している。)



■ 再び「事務室」へと戻って行って


 ――一通り(大雑把に)『監視カメラ』の映像を調べたシュウとロナルドは“録画データをコピーして貰う”等をして後に「警備室」を後にした。

 そして(挨拶をする為に)「事務室」へと向けて歩いていたその時に、シュウはロナルドへとこう言った。

「『録画してある映像』の中からテロドスを探し出すのは、中々に骨が折れそうだ……」

「大変そうだな?」

「いやいや、キミも一緒に調べるんだぞ?」

「そうだったな……」

 ――そんな時、

『ガチャッ!』

「「?」」

 と、シュウ達が「事務室」へと辿り着き遣るその前に「事務室」のドアが開かれ遣ってみていては、

「あ……」

「?」

 と、中からは「女(オレンジ色の髪の毛をしている)」と「オカマ(セクシーな格好をしている)」の両名が現れ遣ってみせていた。

「…………」

「…………」

 ――この時シュウと女は“少しの間”だけ目と目が合うが、

『(ペコリ……)』

 と、女はシュウに対して会釈(えしゃく)をしてはその後に、「オカマ」とともにその場を後にしてみせた。


 ――直後、

「やあ♪」

 と、シュウが(ロナルドを廊下に残した格好で)「事務室」のドアを開けてみせ遣ると、「事務員の女」がシュウへと言った。

「シュウさん、終わりましたか?」

「ああ、終わったよ。詳しい分析は警察署に戻ってからする事になる」

「そうですか」

 ――と、シュウは「事務員の女」に尋ね遣る。

「……それより、今出て行った二人組みは?」

「あの二人ですか……? あの二人なら昨日まで開催していた『世界の車両展』のスタッフですが……」

「!?」

「名前は確か……」

 ――直後、

『(ダッ!)』

 と、シュウは“走り出して”みせていた。

「シュ、シュウさんっ!?」

 直感的に「オレンジ髪の女」の事を、“追う必要がある”と思ったからだ。



■ シュウ、女を追う


 ――シュウは「事務室」の中から飛び出すと、

「おっと!」

 と、ロナルドは驚いた。

 そして、尋ねた。

「どうした、シュウ?」

「さっきの女は何処に行った?」

「ああ、彼女なら……」

 ――言われてロナルドは、

『(すっ……!)』

 と、“女の方”を指差すと、

『(スタタタターー!)』

 と、“足早に逃げる”女の姿と、

『(てくてくてく……)』

 と、“廊下を歩く”オカマの姿が見えていた。

 ――直後、

『(ダッ!)』

 と、シュウは“女の背中”を追い出すと、

「ん?」

 と、オカマは振り向いた。

 ――それを受け、

『(ばっ!)』

 と、シュウはオカマから“跳躍”しては距離を取る。

 ――何故ならば、

『(すっ……!)』

 と、オカマはシュウに対して“拳法の構え”をしていたからだ。

 ――一方で、

『(スッ!)』

 と、「女」は“曲がって”は、“姿を消して”みせていた。

 ――シュウは言った。

「何をするっ!?」

「……それはコッチの台詞(せりふ)だわ。あの子に一体(いったい)何の用?」

 オカマは“鋭い目”をしてシュウを見た。

 ――シュウは言った。

「彼女に少し“聞きたい事”が有るだけだ!」

「聞きたい事~?」

 ――と、

「シュウ……」

「?」

 と、ロナルドが声を掛けると、

『(すっ……!)』

 と、“遠くの方”を指差した。

 ――と、

『(チラリ……)』

 シュウが“指された場所”を見てみると、そこには「女子トイレ」と書かれてある“プレートがある”のが見えており、「オレンジ色の髪の女」が“トイレに入って行ったのだ”と理解した。

 ――直後、オカマは尋ねた。

「もしかして、“中に入って”まで“話を聞こう”ってワケじゃあ無いでしょうね?」

「…………」

 シュウは「無言」で言葉を返した。

 ――対してオカマは、

『(すっ……)』

 と、“拳法の構え”を解いて後、シュウへと言った。

「ねぇ……」

「?」

「アタシで良ければ話を聞いても良いけれど……? どうかしら?」

「…………」

 ――それを受け、

『(すっ……!)』

 と、ロナルドは歩み出て、オカマに対して問い掛けた。

「キミ……、名前は?」

「あら、良い男♪ ――アタシの名前はケイ。あの子と同じ『テナンカンパニー』のメンバー(社員)よ♪」


 ――一方その頃、

『プルルルル……』

 「女子トイレ」へと駆け込んでいた「女(フォウ)」は(携帯電話を使っては)「ムーン(筋肉質の大男)」に対して電話を掛けてみせていた。

 ――そして後、

『プッ』

 と、電話が通じると、ムーンがフォウへと尋ねてみせた。

「何だ、フォウ? どうかしたのか?」

「大変です、ムーンさん! 今、警察が来ていますっ!」

「……警察なら昨日も来ていただろう?」

 ――フォウは言った。

「今日の相手は特別ですっ! ニュースでやってた“シュウとかいう男”が来ていますっ!」

「!?」




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