第11話 ロナルドからの事情説明


■ ロナルドからの事情説明


 ――「特別警察(ポートラル支部)」の部屋の一部には「ミーティングルーム」という名の“部屋の一部を間仕切りしただけの空間”が存在していた。

 現在そこには「上座(かみざ)」の方に「大きなディスプレイ」が、「下座(しもざ)」の方には「椅子を備えた長テーブル(幾つかの長テーブルをくっつけてある)」が配置をされてみていては、ロナルドは「大きなディスプレイ」の側(そば)に立ち、皆は椅子へと座っては“上座の方”を向いていた。

 ――そんな中、ロナルドは言った。

「改めまして、IPPOのロナルドだ。今からオレが“この国へとやって来た理由”について説明をする……」

 そう言うとロナルドは持参した「コンピューター」を操作して、「諸々(もろもろ)の情報」を「大きなディスプレイ」へと映してみせた。

 ――するとそこには「とある男の写真(複数あり、隠し撮りしたモノや防犯カメラの映像も含まれている)」が映し出されてみていては、

「!?」

 と、シュウは“驚き遣って”みせていた。

 何故ならそこに映し出された「男の顔」にシュウは“見覚え”があったのだ。

「(ロードスだ!)」

 シュウが昨日“戦車を追うのに協力”してくれた「肌黒男」が、どういうワケだか「大きなディスプレイ」へと映し出されていたのである。

 ――と、ロナルドは言った。

「――この男の名前は『テロドス』。――『十二国』出身の人間で、現在は『アルメリア人』である“国際的なテロリスト”だ……!」

「!!?」

 言われてシュウは驚いた。

 男はまさかの「テロリスト」だった。

 ――と、ユウキが尋ねた。

「あの……、ロナルドさん……」

「なんだ?」

「(映し出された)写真の中には“見た目が違う人”がチラホラいますが、全てが“同一人物”って事ですか?」

 頷いて後、ロナルドは言った。

「そうだ。奴は何度も“整形手術”を受けており、既に原形を留めて(とどめて)はいない……。――そして、ここにある“この姿”が“今の姿”に一番近い……」

「「「…………」」」

 言われて皆は、(ロナルドが指して示した)「テロドスの姿」を暫し(しばし)見た……。

 ――そんな中、ロナルドは言った。

「――皆は『大九龍(ダイクーロン)爆破事件』を知っているか?」

 ――すると、マルコが“挙手”して後に、こう言った。

「知ってるわ。『アルメリア(国)』に存在していた『十二国系の大企業』――『大九龍』に対しての“爆弾テロ”の事でしょう?」

「そうだ。奴はその事件の犯人で、現在『国際指名手配』をされている……」

 ――と、ロナルドは言った。

「――先日、IPPO宛(あて)に『テロドスが十二国へと入った』という情報が寄せられた……。そこで、IPPOが調べた結果、奴が『十二国』へと入国しており、そして『梯大橋(かけはし大橋)』を渡って、ここ『ポートラル』へと“入った事”までは確認出来た……。――だが、“それ以降の足取り”は分からなかった……」

 ロナルドは言った。

「――そこで、IPPOは『十二国政府』へと連絡を入れて、“どうするべきか”の確認をした。すると、『十二国政府』は“IPPOの派遣”を認め、今回オレが『ポートラル』へと“やって来た”――と言う訳だ……」

「「「…………」」」

 ――――――

 ――――

 ――実際に起きた「一連の流れ」としては“こう”である。

 ――ある日、『アルメリア国(の諜報員)』は“テロドスが密かに(ひそかに)『十二国』へと入国をした”という情報を手に入れた。

 そして、「テロドス」の現在の国籍は『アルメリア人』であり、そんな彼が(『アルメリア』とあまり仲の良くない)“『十二国』国内でテロを起こす事”は“非常にマズい事である(「国際問題」へと発展しかねない)”とアルメリア政府は考えた。

 そこで、アルメリア政府は『十二国』に対して“連絡”を取ってみた。

 ――すると、『十二国政府』は“アルメリア警察では無く『IPPO』なら派遣をしても構わない”と言って来た。

 ――『IPPO』は“表向き”は「国際平和警察機構」であるものの、実際の所は「アルメリア国が他国に対して介入する為の(警察)組織」という向きが強かった。

 そこで、アルメリア政府は『十二国』の提案を受け入れて、“ロナルドを派遣する事”にしたのである……。

 ――これにより、もしもテロドスが“『十二国』国内でテロを起こして”も、『アルメリア』としては“何とかしようと努力した”と言い訳する事が可能となった。

 そしてその一方で、『十二国政府』は“テロが発生した事”を口実として“国民に対する引き締め”を今以上に行なう事が可能となり、しかも「その事」に関しては“アルメリアからとやかく言われない権利を得れた”――という流れがあった。

 ――――――

 ――――

 ――と、ロナルドは皆に対して言い遣った。

「――以上でオレからの説明は終了だ。 何か質問は有ったりするか?」

 ――すると、

『(すっ……!)』

「?」

 と、シュウが静かに手を挙げてては、

「……何だ?」

 と、ロナルドは尋ねてみせた。

 ――対して、シュウは言い遣った。

「――いや、“質問”というワケでは無いんだが、“ちょっと”な……」

「?」

 ロナルドは“不思議そうな顔”をした。

 ――その後、シュウは“手を下ろして”は、プー部長へと話を掛けた。

「プー部長」

「ん?」

「昨日、戦車の『暴走事件』がありましたよね?」

「ああ、あったな。それがどうした……?」

 ――と、

『(すっ……!)』

 シュウは『ディスプレイ』へと映る“テロドスの事”を指差して後、こう言った。

「――実はその時『戦車を追うのに協力してくれた人物』が、『画面の男』にそっくりなんです……!」

「「「!?」」」

 言われて皆は驚いた。

「本当か!?」

「ええ、本当です」

「先輩、ホントなんですかっ!?」

「ああ、そうだ」

「それマジで言ってンの!?」

「ああ、マジだ……!」

 ――と、ロナルドはシュウに対して尋ね遣る。

「シュウ……、今の話は本当なのか? テロドスがキミに“協力をした”というのは……?」

 ――頷いて後、シュウは言った。

「ああ、本当だ。ただ、誓って言うが、ボクは“彼がテロリストである”と知った上で“協力して貰った”ってわけじゃあ無いぞ?」

「まぁ、そうだろうな……」

 次いでロナルドは尋ね遣る。

「……それで? そいつは今、何処にいる? 連絡先とかは聞いていないのか?」

「いや、さすがにそれは聞いていない……」

 ――と、その一方で、

『(ピッ! ピッ! ピッ!)』

 と、プー部長は自身の「携帯電話」を弄って(いじって)後に、

「ロナルド……」

「?」

 と、ロナルドへと「携帯電話」を渡してみせた。

「これは……!?」

 それは昨日、一般人が“海から上がって来たテロドス”を「撮影した時の動画」であった。

 ――プー部長は尋ね遣る。

「どうだ? 奴か……?」

「…………」

 ――と、ロナルドは“動画を見て”みせて後、

「ええ、間違いないです……。ヴィーシャの姿も確認出来ます……」

 と、そう言った。

 そして、尋ねた。

「プー部長、この動画の続きは……?」

『(フルフルフル……)』

 プー部長は首を“横へと振って”後、こう言った。

「残念ながらここまでだ。偶然撮影された映像だからな……」

「…………」

 ――と、ユウキが言った。

「あー、“だから”なのか~!」

「……何がよ?」

「いえね、シュウ先輩に協力をした『ヒーロー』なのに、“名乗り出て来ない”ってのは不思議だな~って思ってたんです! 当人が“テロリストだった”からメディアへの露出を嫌がったんですね~♪」

 ――直後、

『ガララッ!』

「「「!」」」

 と、プー部長は“椅子から立ち上がって”みていては、皆へと言った。

「――それでは今から役割分担の発表するっ!」

「「「はいっ!」」」

 そして、言った。

「――シュウ、ユウキ、それとロナルドは“テロドスの捜査”に当たってくれ。段取りは任せる!」

「「はいっ!」」

『(コクリ)』

「――そして、マルコとコウは先週に引き続き『妖怪髪クレ事件』の方を当たってくれ!」

「分かったわ!」

「了解どすぇ~♪」

「――それから、ダオはオレとココに残って、皆の後方支援を行なう! 良いな?」

「ああ、構わんさ☆」

 ――次いでプー部長はロナルドへと尋ね遣る。

「それとロナルド……」

「はい、何でしょう?」

「出来れば今見せて貰った『テロドスのデータ』はココに置いて行ってくれないか?」

「…………」

 ――寸間して後、ロナルドは言った。

「……分かりました。では、コンピューターはこのままにして置きます」

「有難う、助かるよ……。それと、“機密情報は外へと漏らさない”から安心をしろ」

「お気遣い頂き、感謝します……!」

 ロナルドは小さくプー部長へと礼をした。

 ――そして後、プー部長は皆へと言った。

「よし! それじゃあ作戦開始だっ! 皆、注意を持って事に当たれよっ!」

「「「はいっ!」」」



■ 「警察署」内にある駐車場にて


 ――「ミーティングルーム」を後にして10分程が経過した。

『『『カツ、カツ、カツ……!』』』

 現在、シュウとロナルド、そしてユウキの三人は「警察署」にある「駐車場」へとやって来ており、三人は歩きながらに「白いバン(色々と改造してある)」へと向かっていた。

 ――と、ロナルドがシュウへと尋ねた。

「それで……? これからいったいどうするつもりだ?」

「キミは今、“テロドスを乗せて走り去っていった車の行方(ゆくえ)”が気になっているんだろう?」

「ああ、そうだ」

 ロナルドは頷いた。

 ――すると、シュウは言った。

「“そっちの情報”に関しては既にダオに頼んで来ている。だから昼までには色々と“情報を得る事”が出来るだろう」

「そうか……」

 ――そして後、

『『『カツ、カツ、カツ……』』』

 三人は「白いバン」へと辿り着いてみせ遣ると、ロナルドがシュウへと尋ねてみせた。

「それで? これから何処へと向かうつもりだ?」

「ロナルド……、ボクらには“行くべき場所”が存在している……!」

「行くべき場所?」

「ああ!」

 シュウは頷いて後、こう言った。

「それは昨日、ボクが“テロドスと出会った場所”――すなわち、『世界の車両展』が開催されていた会場だ!」

 ――と。




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