第4話 シュウの立てた「作戦」


■ シュウの立てた「作戦」


 ――場面変わって「どこかの服屋」。

 現在ここではシュウの上司である「プー部長(小太りで、タヌキっぽいオジサン)」が嫁さんの買い物に付き合っていては、“試着室にて試着をしている嫁さん”を暇そうに待ってみせていた。

 ――そんな中、

『プルルルル~……』

「?」

 と、プー部長の「携帯電話」が鳴っていては、プー部長は電話に出てみせていた。

「はい、もしもし?」

「プー部長、シュウです!」

「おう、シュウか? こんな休みの日に何の用だ?」

 ――言われてシュウは「事情」を伝えてみせていた。


 ――場面戻ってはシュウとテロドス。

『ピッ……!』

 プー部長との通話を終えたシュウは「携帯電話」を切り遣った。

 ――と、テロドスがシュウへと尋ねた。

「……で? どうなった?」

「『シャンシャン』にはプー部長が色々と掛け合ってくれる事になったよ。あと、『ポートラル』の警察に対しても応援を要請してくれるらしい……」

「そうか……」

「…………」

 この時テロドスは“シュウが自分に何かを期待している事”を横目ながらに感じていた。

 そこでテロドスはシュウへと問うた。

「……それで? オレに“どうして欲しい”って言うんだい? このまま戦車に接触しても、さっきのパトカーの二の舞だぞ?」

「ああ、そうだな……」

 確かに“その通り”である。

 「戦車」に対し“気付かれないよう”に接近をしなければ、「スポーツカー」は“道路を転がる”事になる。

 ――そんな時、

『ハッ!』

 と、シュウは“とある事”に気が付いた(閃いた)。

「『ループ線』だっ!」

「あ?」

「『ループ線』を利用しようっ!」

「ループ線……?」

 ――『ループ線』とは、「螺旋(らせん)を描いている道路」の事であり、それは「低所←→高所」間の移動を可能とする為の道路の事である。

 「シャンシャン」と「ポートラル」とを繋ぐ『梯大橋(かけはし大橋)』は“地面よりも高い位置”にて存在しており、その為に車で橋へと至るには「螺旋状の道路」を“ぐるり”と回る形にて上って行く必要があるのであった。

 シュウは言った。

「『ループ線』を上がっている最中だったら“周囲への警戒”は薄れるハズだ! それに、坂を上っている間は“無闇にハンドルを切る”ワケにも行かないから“車体をぶつけられる心配”も無い! だからボクらはその時を狙って『戦車』に対して接近し、ボクが『戦車』に対して飛び移る――! どうだ!?」

 なんとも大胆な「作戦」だった。

「…………」

 話を聞いてテロドスは「(都合良く考え過ぎなんじゃないか……?)」と思ってみせた。

 ――そこで、テロドスは尋ね遣る。

「なぁ……」

「ん?」

「これは、そうまでして“やらなくちゃあならない事”なのか……? 戦車の件は『シャンシャン側の連中』に“任せる”ってワケには行かないのか……?」

「…………」

 シュウは言った。

「――ポートラルとシャンシャンは昔、“戦争をした事がある関係”なんだ……。けれども今は『梯大橋(かけはし大橋)』も完成し、“仲良くなってはいる”けれど、未だに過去を引きずって“相手の事を悪く思っている人”も少なからずに存在している……」

「…………」

「だからもし、『今回の件』が切っ掛けで、再び“不仲になってしまう”のだとしたら、ボクはとっても悲しく思う……。――だからボクは“そうなってしまう”その前に、“事件を解決したい”と思うんだ……」

「…………」

 ――それに対してテロドスは、

「はぁ~っ……」

 と、溜め息一つ吐いて(ついて)後、シュウに対してこう言った。

「――良いだろう。だが、これで最後だ……!」

「ロードス!」

「けれどもし、お前が“戦車に飛び移れなかった”場合には、オレは“お前への協力”を取り止める! ――それで良いな?」

「ああ、良い! それで良い! ホントに助かるっ!」

 シュウは笑顔を見せては喜んだ。

 ――と、テロドスはそんな「シュウの笑顔」を“横目で見て”は、その後に、

「……失敗してもオレの事を恨むなよっ!」

 と、そう言った。

 ――対してシュウは、

「モチロンだ!」

 と、そう言った。

 ――それを聞いてテロドスは「アクセルペダル」を踏み込むと、

『ヴゥウウウウウーーーーン!!』

 と、「戦車」に対し向かって行ってみせていた。



■ 「ループ線」にて


『ギャルルルルルルーー!』

 ――現在、シノビンが運転する「戦車」が一台、“前方高く”に存在している「梯大橋(かけはし大橋)」目指しては「片側4車線の道路」を走っていた。

『ヴゥウウウウーーーーン!!

 そしてその後方には“警戒されない程度に距離を保つ形”にて「テロドス(ロードス)」の運転する「スポーツカー(オープンカーである)」が機会を窺って(うかがって)みせていた。

「見えたっ! ループ線だっ!」

「ああ、分かってるっ!」

 ――と、

「なぁ!」

「?」

 テロドスがシュウに対して尋ね遣る。

「これが最終確認だ! 本当に仕掛けて良いんだな!?」

「ああ! さっき言った通りにヨロシク頼むっ! それと……!」

「なんだ……?」

「今更なんだがキミの事を巻き込んでしまって“スマナイ”って思ってる! けれど、『ポートラル』の治安や自治権を維持する為には“『シャンシャン』とのイザコザは絶対に避けるべき”なんだっ……!」

 ――対してテロドスはシュウへと言った。

「気にするな……! 昨日、“ウンザリする事”があったんだ……! だから今日は何となく“人助けがしたかった”……それだけだっ!」

「ロードス……」

「それと……!」

「……何だい?」

 テロドスは言った。

「“守りたいものがある”ってンのなら“手が届く内に”守ってみせろ! “手遅れになってしまう”その前になっ……!」

「…………!」

 シュウはテロドスの言葉を聞いて、心が震えた。

 そして、頷いてみては、こう言った。

「ああ、絶対にやり遂げてみせるさ! 絶対にな……!」


 ――やがて、

『ギャルルルルーー!』

 と、「戦車」は「ループ線(の入口)」へと差し掛かり、坂道を“上がり始めようかしら”としてみせていた。

 テロドスは言った。

「行くぞっ!!」

「ああっ、頼むっ!」

 シュウはシートベルトを“外して”は、“いつでも戦車へと飛び移れる姿勢(体勢)”へと移ってみせた。

『ヴゥウウウンッーーーー!!』

 次いでテロドスはアクセルペダルを強く踏み、「戦車」に対して一気に距離を詰め出した。

 ――対して「戦車」は、

『ギャルルルルルルルーー!』

 と、「ループ線」へと入っていては、「螺旋で出来た坂道」を上へと向けては上り行く。

『ヴゥウウウウウウンッーーー!!!』

 するとテロドスは“速度を上げて”は追い付いて、やがては「戦車」の“真横”に付け遣った。

 ――直後、

「とおっ!」

 と、シュウは「戦車」に対してジャンプした。

『ドンッ!』

「!?」

 少しだけ“乱暴な接触”ではあったものの、シュウは見事に「戦車」に対し“飛び移る事”が出来ていた。

 ――そしてシュウは、

『(グッ!)』

 と、テロドスに対して“親指を立てて”みせ遣ると「上手くいった☆」と伝えてみせた。

 ――対してテロドスもまた、

『(コクリ……)』

 と、頷き返しては、「戦車」から“距離を取る”為に「アクセルペダル」から“ゆっくり”足を離してみせた。

 ――が、その寸前、

「何するデーーーーーース!!!」

「「!!?」」

 突如(テロドスに対して怒り狂った)シノビンが、

『ギャルルルルルルルーー!!』

 と、急にハンドルを切ってみせては、

『ガガガガガッ!』

「うおおおおっ!!?」

 と、テロドスの「スポーツカー」に対しては“体当たり”をしてみせた。

「くっ――!!」

「ロードスっ!」

 ――この時「スポーツカー」は“「ガードレール」へと押し付けられている”という格好であり、

『ガガガガガガガガ!!!』

 既にテロドスの“コントロールを離れて”いては“操作を受け付けない”という状態だった。

 ――そして、“「ガードレール」へと押し付けられながら”に「ループ線」を上がって行くと、

『ドォンッ!!』

「!!?」

 と、やがては“限界”を迎えていては、“下から上へと突き上げられる形”にて、「スポーツカー」は「空(そら)」へと向けて“吹き飛ばされて”みせていた。

「ロードーーーーーースっ!!!」

 シュウは叫んだ。

 ――が、テロドスの乗った「スポーツカー」は「ループ線」の“外側”へと既に投げ出されていてみていては、

『ブウン……! ブウン……! ブウン……!』

 と、車体を回転させながらに「下」へと向けては落ちて行き、

『ドボーーーーーーン!!!』

 と、海へと落ちては「大きな水柱」立てていた。

「――っ!」

 この時シュウは“戦車から落ちないように”しながらも“テロドスの方”へと目を遣っていた。

 ――が、けれども“シュウの位置”からでは“テロドスがどうなってしまったのか”を(物理的に)確認する事は不可能だった。

「……っ!」

 この時シュウは「テロドス(ロードス)」に対し「申し訳ない」と思ってみせた。

「(無事なのだろうか?)」

「(どうか無事であってくれ!)」

 と、思って、そして“願って”みせた。

 けれども――、

『(カッ!)』

 と、シュウは初心に帰ってみていては、「自分が成すべき事」を思い出す。

 そして、“シノビンを説得”する為に、シュウは「戦車」の「フロント部分」へと向けては“移動を始めて”みせていた。




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