第3話 「ゲート」にて


■ 「ゲート」にて


 『世界の車両展』が開催されている「産業展示場(メッセメッセ)」の駐車場には「遮断機(しゃだん機)」を備えた「ゲート」があって、現在そこには二人の「遮断機操作員」と二人の「警備員」が立っていた。

「――分かりました。今から対処します……!」

 「屋内展示場」から“「戦車」が持ち出された”との連絡(通話)を受けて、一人の「遮断機操作員」が皆に対して指示を出す。

「今から戦車がやって来る! 客が来てもそっちの(入場)ゲートを開けるなよっ!」

「えっ? 戦車ですか?」

「そうだ! 分かったか?」

「はいっ! 分かりましたっ!」

 加えて警備員へとこう言った。

「それと、警備員の二人は手にしてる自動小銃で戦車の事を迎え撃てっ!」

「こ、これでですかっ!?」

「む、無茶ですよっ! コレ、オモチャですよっ!?」

 現在、二人の「警備員」は肩から「自動小銃(レプリカ)」を提げていた。

 けれどもその「弾」は「有機高分子物質」で出来ており、殺傷能力は殆ど(ほとんど)無く、「戦車」に対しては“無力である”と思われた。

 ――と、

「来たぞっ!」

「「「!」」」

 言われて一同が目を遣ると、“遠くの方”から「戦車」が“向かって来ている”のが見えていた。

 「遮断機操作員」は言い遣った。

「銃を構えろっ!」

「は、はいっ!」

「や、やってみますっ!」

 戦車は『ギャルルルルルル……!』とキャタピラを回しながらに近付いて来てみせており、二人の「警備員」は「戦車」に対して「自動小銃」の照準を合わせてみせると、次いでは「遮断機操作員」が言い遣った。

「撃てえっ!」

 ――直後、

『『ダダダダダダダダダダダダダダ!!!』』

 と、二人の「警備員」が引き金を引いては「自動小銃(レプリカ)」を撃ってみた。

 ――が、しかし、

『キンッ! コンッ! キンッ! コンッ! キンッ! コンッ!』

『コンッ! キンッ! コンッ! キンッ! コンッ! キンッ!』

 と、「有機高分子物質」で出来た銃弾は「戦車」に対して“当たり”はするが、その厚くて硬い装甲を貫く事など不可能だった。

 ――対して、「戦車」の中のシノビンは言った。

「スズメの子ー! そこのーけそこのーけ! 戦車ーが通るーー!!」

 ――直後、

『ギャルルルルルルルルーー!!』

「うわああああっ!!」

「逃げろー!!」

 「戦車」は「キャタピラ」を回転させながらに「遮断機」へと突っ込むと、

『バゴンッ!!』

 と、「遮断機」を突き破り、ぶっ壊された「遮断機」は宙へと舞っては、

『ガラン! カラン!』

 と、地面に落ちた。

「大丈夫かっ!?」

 ――「遮断機操作員」は声を掛けると、

「だ、大丈夫ですっ……!」

「な、ナントカ……!」

 と、「警備員」の二人は返事した。

 ――と、

「道路に出ますっ!」

「「「!?」」」

 もう一人の「遮断機操作員」がそう言うと、三人は急ぎ“「戦車」の方”へと目を遣った。

 ――すると、

『カッチッ……カッチッ……カッチッ……カッチッ……』

 と、「戦車」は「交通量の多い道路」を前にして「(右への)ウインカー」を点けながらに停車をしてみていては、“道が空く(すく)のを”待っていた。

 ――と、一人が言った。

「そこは安全運転で行くのか……」

 ※(ちなみに『ポートラル』では「右ハンドル」の「左側通行」が基本である。)

 ――直後、「遮断機操作員」が通信機を使ってはムーンに言った。

「ムーンさん、こちらゲートです! 戦車に突破されましたっ!」

『わかった! スグに行くっ!』

 ――そんな時、

『ヴウウウウウウウウンッ!!』

「「「!?」」」

 と、音がした。

「今度は何だっ!?」

 4人は「何かの音」に気付いてみては“そちらの方”へと目を遣ると、

『ヴゥウウーーーーン!』

 と、一台の「スポーツカー(オープンカーである)」が“コチラに向かって走って来ている”のが見えていた。

 ――そして後、

『キィイイイッ!!』

 と、「スポーツカー」は「ゲート」付近にて停車をすると、「助手席」にて座っていたシュウが尋ねてみせていた。

「おいっ! さっきの戦車はどこに行った!?」

「誰だ、アンタ!?」

「『ポートラル特別警察』のシュウだ! 戦車を追いたいっ! どっちに行った!?」

「!?」

 「警察」と言われて「遮断機操作員」は、急ぎ“「戦車」の姿”を探してみるが、既にその姿は無いでいた。

 ――けれども、“「戦車」の動向”を観察していた「警備員」の一人がこう言った。

「戦車なら右の方に曲がったよ! 今からキミらを誘導するよっ!」

「助かるっ!」

 ――直後、「警備員」は走り出してみていては、「交通量の多い道路」へと至り遣り、道路を走る車に対しては“停車”を促してみせていた。

 ――そして、道路へと至ったテロドスはハンドルを切っては「右」へと進むと、

「有難うっ!」

 と、シュウは「警備員」へと礼を言い、

「お気を付けてっ!」

 と、「警備員」もまた言葉を述べてみせていた。



■ 「交通量の多い道路」にて


 ――そこは「交通量の多い道路」であった。

『ヴゥウウウウンーー!』

 テロドスは「スポーツカー」を加速させては“危険運転(走行中の車の合間を抜けながらの運転)”を行なって、「戦車」に対して迫って(せまって)行った。

 しかし、“前方遠く”にある信号機の色が「赤色」へと変化をすると、他の自動車達は続々と速度を落として停止をしては、“渋滞を起こして”みせていた。

 ――それに倣って(ならって)テロドスもまた車を止めてみせ遣ると、

「あそこだっ!」

 と、シュウは遠方に対して指を差した。

 ――どうやら「戦車」もまた「赤信号」に当たっていては“停車をして”みせており、シュウは“この機会に一気に戦車に取り付いてみせよう”と考えた。

 ――故に、

『シュルルルルッ!』

 と、急いでシートベルトを外しては、シュウは(車の)ドアを開け遣って、車から降りてはドアを閉めた。

 対してテロドスはシュウへと問うた。

「どうするつもりだ?」

「今から走って赤信号の内に辿り着く! ロードス、今まで有難うっ!」

 ――と、シュウはテロドスへと片手を挙げて挨拶(あいさつ)すると、

『(ダッ!)』

 と、駆け出してみてくれていた。

「…………」

 テロドスはそんなシュウの“後ろ姿”を見ていては、「(間に合うのか……?)」と思ってみせてくれていた。


 ――一方その頃。

『(ざわざわざわ……)』

 「戦車の周辺に居た人達(車に乗っている人や歩道にいる人達も含む)」は物珍しそうに「戦車」の事を見てくれた。

 人によっては「(何かの訓練か?)」と思ったり、人によっては“カメラを使って動画や写真を撮って”みせたり、人によっては“インターネットで調べて”は、「シノビンの生配信ページ(シノビン☆ちゃんねる)」へと到達する者も有りはした。

 ――そんな中、信号の色が「赤」から「青」へと変化をすると、

『『『ブルルン……!』』』

 と、停車をしていた車らが(次々と)発車を始めてみせていた。

『ギャルルルル……!』

 ――そしてそれは「戦車」に関しても同じであって、

「――っ!」

 と、シュウは“全力で走って”は“「戦車」を目指していた”のであるのだが、

『ギャルルルルーー!』

「くそっ!」

 と、「戦車」は“左折”を行なっていては、シュウを“置き去りにして”みせていた。

「はあっ! はあっ! はあっ! はあっ! はあっ……!」

 対してシュウは諦めず(あきらめず)に“少しの間”は走ってみせた。

 けれども、「戦車」に対して“追い付く事”は無いでいて、やがては諦め遣ってみていては、

「はぁっ……!」

 と、息を吐いて後、

『(とぼとぼとぼ…………)』

 と、“立ち止まって”みせてくれていた。

 ――が、そんな時、

『プップーーー!』

「!?」

 と、自動車の「警笛」が鳴らされ遣ってみていては、

『ブルルルンッ……!』

 と、“シュウの横”へと「スポーツカー」が停車した。

 「運転席」の男がシュウへと言った。

「乗れっ! 戦車を追うぞっ!」

「ロードス!」

 それは「ロードス=ランド(テロドス)の車」であった。

『ガチャッ!』

 ――直後、

『バンッ!』

 と、シュウは「スポーツカー」へと乗り込むと、

『ヴゥウウウウンーー!』

 と、テロドスは「アクセルペダル」を踏み遣って、「戦車」を追い掛け出していた。



■ ピピからの電話


『ヴゥウウウウンーー!』

 ――「交通量の多い道路」を走りながらにテロドスはシュウへと尋ねた。

「戦車はどっちに行ったんだ?」

「左だっ!」

「左だな!」

 言われてテロドスはウインカーを出しては交差点にて“左折”をすると、「交通量の多い道路」から「片側4車線の道路」へと至ってみせてくれていた。

 ――そんな時、

『プルルルル……!』

「「!?」」

 と、シュウの「携帯電話」が“着信音”を告げていた。

 シュウが「発信者の名前」を見てみると、それが“ピピから来た電話である”と見て知れた。

 ――と、シュウは電話に出ては、ピピへと言った。

「ピピ、どうしたんだい?」

「“戦車を運転している人物”の事が分かったわ!」

「本当かい!?」

「ええ!」

 ピピの職業は「フリーのジャーナリスト」であるのだが、しかし時々こうやって“シュウの事を助けてくれて”みせていた。

 ――直後、

『ピロリン♪』

 と、シュウの「携帯電話」に対しては「リンク先(アドレス)」が送られて来た。

 シュウは「ハンズフリー機能」をONにして、次いでそこに対してアクセスすると、現在「戦車」を運転しているシノビンの「動画配信チャンネル」である『シノビン☆ちゃんねる』へと到ってみせた。

 ――“画面の向こう側”に居るシノビンは言った。

「重ね重ね(かさねがさね)の投げ銭ありがとデース! ワタシとっても助かりマース♪」

 現在シュウが見ている「動画(生配信中)」には、「戦車を運転しているシノビンの姿」と「戦車内から見える前方の映像」が映し出されてみていては、加えてその動画には「視聴者からの沢山のコメント」が寄せられており、「現在の動画の視聴者数」は“2万人”との表記があった。

 電話の向こう側のピピは言った。

「彼女の名前は『シノビン』。いわゆる“迷惑系動画”の配信を行なっている『インターネットパフォーマー』よ!」

「ああ。見た感じ“そんなカンジ”に見えている……!」

 ――と、シュウが動画を見ていると、

『相変わらずバカやってんな!』

『さっさと逮捕されろクソ女!』

『超ウケる!』

『今日も元気そうで何よりです♪』

『やり過ぎてヤバ味!』

 等の「コメント」が動画に対して投稿をされてみせていた。

 ――けれども、その一方で、

『ポートラルからシャンシャンに戦車で行くのはマジでヤバイだろ?』

『シャンシャンの連中、過剰反応しそう♪』

『おっ! 戦争か?』

『長きに渡る因縁の歴史に決着をつける時が来たようだ!』

『私、知ってる! 確かこの後ポートラルは独立したんだよね?』

 等のコメントも見掛ける事が出来ていた。

 ――シュウは言った。

「ありがとう、ピピ。助かったよ」

「うん、役に立てたのならば良いけれど……」

「けど……?」

「あんまり無茶はしないでね?」

「……ああ、分かってる♪」

 シュウは笑顔でそう言うと、ピピとの通話を切り遣った。

 ――と、隣で話を聞いていたテロドスがシュウへと尋ねてみせた。

「今の電話の相手はアンタの“同僚か何か”かい?」

 すると、シュウは言った。

「単なるボクの恋人さ♪」

 ――と。



■ 「謎のコメント主」からの提案


『ヴゥウウウウンーー!』

 ――現在テロドスはシノビンの運転する「戦車」を追って「スポーツカー」を走らせていた。

 この時、“戦車との距離”は“離れてはいなかった”ものの、けれども“不用意に近付く”という事はせずにいて、“程々の距離”を取っていた。

 シュウは言った。

「戦車が赤信号で止まってくれれば“取り付く事”も出来るんだけれど、何故だか今日に限って青信号の連続だ……!」

 ――「シュウの予定」では「戦車」が“赤信号で止まった際”に“一気に距離を詰めて”後、「戦車」の正面に回り込んでは“「戦車」に取り付く”というものであった。

 けれども今日は運が良いのか悪いのか、信号は常に「青」を維持し続けてみせており、シュウ達は“作戦を実行に移す機会”を失い続けてみせていた。

 ――と、テロドスが尋ね遣る。

「――奴さん(やっこさん)は、いったい何処へと向かっているんだ? その目的は何なんだ……?」

 シュウは言った。

「彼女の目的は分からない……。いや、強いて(しいて)言うなら“派手をやらかす事”になるのかな……? けれども、その“目的地”だけは分かっている……」

「それは何処なんだ?」

「どうやら彼女の目的地は、本土の『シャンシャン』であるらしい……」

「それって対岸にある『シャンシャン』の事か?」

「ああ、そうだ……!」

 ――『シャンシャン』とは「ポートラル島」とは“海を挟んで”存在している「大陸側(十二国本土)」の都市の名前である。

 両都市の間には“海が存在している”故に、以前は“船を使っての往来”のみが可能であった。

 けれども『十二国』として統一をしてから暫く(しばらく)して後、両都市の間には「海を跨いだ(またいだ)大きな橋」が架けられ(かけられ)遣ってみていては、今では「シャンシャン」と「ポートラル」の間は“車で移動する事”が出来ていた。

 ――と、

『『ウ~~~ン! ウ~~~ン! ウ~~~ン! ウ~~~ン!』』

「「!?」」

 シュウ達の“後方”から「パトカーのサイレン」が聞こえて来ては、二台のパトカーがシュウ達の横を追い抜いて「戦車」に対して向かって行った。

 テロドスは言った。

「良いのかい? このままじゃ連中に先を越されちまうぞ?」

「ああ、構わない。それで“事件が解決”するんなら、万々歳(ばんばんざい)というトコさ!」

「…………」

 ちなみにシュウはこのパトカーは“『世界の車両展』の人間が呼んだものなのだろう”と考えていた。

 ――と、前方を走る一台のパトカーが「戦車」に対して呼び掛けた。

「そこの戦車、止まりなさいっ! そして、運転手は車から降りて外へと出なさいっ!」

 ――だが、しかし、

『(し~ん……)』

 と、「戦車」からは“何の反応”も無いでいた。

「…………」

 この時シュウは「目の前の出来事」と『シノビン☆ちゃんねる』とを交互に見ては、“事の成り行き(なりゆき)”を見守っていた。

 ――そんな中、『シノビン☆ちゃんねる』の方で“変化”があった。

 ――なんと、

『パトカーに体当たりをしたらお金をあげよう』

 というコメントが“高額の投げ銭”とともに投じられていたのである。

 ――そして、それに対してシノビンは、

「わ~お! それ、本当デスか~?」

 と、言い遣ってみせ遣ると、

『今のは単なる前金(まえきん)だ。成功報酬は倍額払おう』

 と、コメント主は返事を返してみせていた。

「――まさかっ!」

「ん?」

 この時シュウは“悪い予感”を覚えては、“前の方”へと目を遣った。

 ――直後、

『ドオンッ!!』

「!!?」

 と、「戦車」はパトカーに対しては“体当たり”をしてみては、

『ゴワン! ゴワン! ゴワン! ゴワン……!』

 と、パトカーは“道路を転がって”みながらに、“シュウ達の目の前”へと現れ遣ってみせていた。

「ロードスっ!」

「分かってるっ!!」

 ――テロドスは急ぎ(一瞬サイドミラーで他の車へと注意を払いつつも)ハンドルを大きく切り遣ると、

『キィイイイーーーーッ!!』

『ゴワン! ゴワン! ゴワン! ゴワン……!』

 と、“転がって来たパトカー”を回避してみせてくれていた。

 ――テロドスは言った。

「オイオイオイ! 正気なのか、あの戦車(の運転手)っ!?」

「…………」

 ――と、シュウは再び『シノビン☆ちゃんねる』へと目を遣った。

 すると、先程のコメント主は宣言通りに“多額の投げ銭行為”をしてみせていた。

 そして、それを見ていた視聴者達は“コメント主の有限実行っぷり”を賞賛しては、『シノビン☆ちゃんねる』は大盛り上がりとなっていた。

 ――そんな中、コメント主は“こう”言った。

『もしもこのままシャンシャンまで来られたら、今払った額の10倍を出そう』

 ――と。

「こ、これはマズイぞっ……!」

「ん……? どうした? ――って、またかよっ!!」

 ――直後、

『ゴワン! ゴワン! ゴワン! ゴワン……!』

 と、再び“「戦車」に体当たりをされた”パトカーが“転がって来て”みせていた。

「――っ!」

『キィイイイイーーーッ!!』

 そこでテロドスは再びドライビングテクニックを駆使しては、どうにかそれを回避した。

 ――シュウは言った。

「あの戦車、本気で『シャンシャン』を目指す気でいるぞっ!」

「そうなのか? で、何かマズイのかっ!?」

「ああ、激マズだっ!!」

 ――シュウはそう言い遣ると、

『プルルルル……!』

 と、「携帯電話」を使っては、“誰か”に電話を掛けだしていた。




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