第7話

☆第6話の内容を大幅に変えています。一度投稿してからの大幅な修正申し訳ありません。第6話をもう見た方はできれば第6話の方を見てから第7話を見てほしいです。





「……え?……いいの?」


今になって桜木に同情したなんてことは言えない。何もできずに当時若かった祖父を突然失ったことがある俺は、失ってから気づく大切さをよく知っている。桜木の叔父がどの程度深刻な状態かは分からないが、あれだけ懇願されたら仕方ない。


「桜木の叔父がそれで喜んでくれるかはわからんけどな」



「……ありがとう省吾君。おかげでちょっとすっきりしたわ」



花のような笑顔で見つめてくる桜木に目を奪われる。不覚にもドキッとした。やっぱり桜木は怖い顔よりも笑っている方がいい。心からそう思ったが、当然それを口に出すことはない。

桜木はかわいい。普通なら近づくことさえままならないが、偶然の出来事でと呼べる存在で桜木の偽の彼氏になった。ただ俺とはあくまで友達としての関係。それを俺から壊すわけにはいかない。改めて自分に言い聞かせる。



「ところで俺はいったい彼氏として何をすればいいんだ?」


桜木の叔父さんに彼氏のふりをして会うのか、叔父さんには口頭で彼氏の報告をして、疑われた場合の保険の俺なのか。どちらにせよ、俺の演技力が試されるわけだ。幼稚園の演劇以来演技なんぞしたことがない俺には不安要素しかない。そういうところも桜木はちゃんと考えてくれているんだろうか。


「もちろん、叔父さんに会ってもらうわ。あと、買い物に行ったり、水族館とか遊園地とか行きたいなー。あとあとこの時期海とかプールとかもいいわよね…………あっ、いやこれは」


一度考えだしたら止まらなかったようで楽しそうに想像を膨らませていた桜木だったが、俺の方を向いて一人で盛り上がっていたことに気付いたらしい。いきなり小声でぶつぶつと何か唱えている。


「……こっこれでいいわ……うん。......いや、叔父さんに会うときにお互いの事何も知らなかったらまずいじゃない?だから最低限交流は必要だと思うの……ね?」


残念ながら後から桜木が理由を考えたことはとっくにばれてしまっている。俺は昔から耳が人一倍いいのでたとえ小声であっても色々と聞こえてしまうのだ。だから、桜木のような美少女とのラブコメ展開でよくある、鈍感系主人公をみるたびイライラしてしまう。絶対そこは聞こえてるだろってな。というか何で桜木はそこまで焦って弁明しているのだろう。叔父さんと、彼氏として会うことを考えたら最低限の交流は必然だろ。それを後から考えたのなら、本当は何を思って言ったのだろうか。毎度学年上位に食い込む秀才の桜木には俺では思いつかないほどの策があるのかもしれない。


「……そうだな。情報共有は大事だと思う」


「えぇ、そ、そうよね。」


桜木はホッと胸をなでおろす。


「じゃあ。今日はもう遅いから帰るけど、その前に!」


唐突にスマホを突き出す桜木。画面には可愛らしい猫のアイコンと桜木早希の文字がある。なるほど。今のところ俺と桜木の接点といえば、同じ生徒会というだけ。生徒会でたまに会うことはあるだろうが、連絡先を交換しておいた方がいいだろう。


「あぁ。わ、分かった」


HINEを開いてさっさと友達追加を済ませる。すると、早速桜木からの通知がきた。トーク画面を開いてみると


『これからもよろしくお願いします』


の文字が。今目の前にいるのに……。

これじゃまるで付き合いたてのカップルじゃないか。からかわれていると分かっていても、ちらちらと俺の顔を覗いては目を逸らす桜木にそんなことを言えるはずもなく。

艶やかな髪を左手でいじりながらスマホの画面を見つめる桜木をよそに、気を付けて帰るようにだけ伝えてその場をあとにした。




★今回の話を読んでいただいた人に一つお願いがあります。

文章の長い短いがあまりよく分かっておらず、少し知りたいと思ったので、短ければ【短い】とコメントよろしくお願いします。できるだけ要望に沿うようにしていきたいので今後とも何かあればコメントお待ちしています!




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