エッセイ的なナニカ

サトウ

創作について的な

 私は彼女を彫り出さなければならない。森羅万象に埋もれている彼女を。

 私はずっと考える。彼女がどんな人間なのか、私は知らなければならないのだ。知るということが仮に、知らないことを知っていることにすることであるならば、実は彼女はずっとそこにいるのである。

 私が知らないだけで彼女はそこにいるのだ。私が知らないだけなのだから。だから、私は必死に彼女を知ろうとする。そうしなければ、彼女は『彼女』になれないのだ。

 私は丹念に研いだ思考の刃で、彼女を掘り出していく(なまくらではいけない)。

 産まれて、生きて、死んでいく。彼女の真っ白な人生に、彼女を『彼女』足らしめるエッセンスをツギタサナケレバ。


 どこで生まれ、何を食べ、何が好きなのか?


 私は彼女を知ろうとする。そのために、私は必死に世界を知ろうとするのだ。どこかに、彼女の一部分が、彼女のカケラがあるから。けっして、見落としてはいけない。私は彼女を血の通った人間にしてあげたいのだ。

 人形であるわけがないのだ。もしも、彼女が私のマリオネットになってしまうことがあるのであれば、それは『彼女』ではない。私自身なのだ。

 私のカケラをもしも、彼女に飲み込ませることがあったとしても、無理矢理埋め込むことがあったとしても、『彼女』はけっして、私にはならない。してはならない。


 それなのに、そういった決心の元に彫り続けなければならないはずなのに、刃はいつもなまくらで、私は彼女を掘るのに飽きてしまうのだった。

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