第28話
幸いにして、あちこちほっつき歩いていた姪っ子は17:30頃、家に戻ってきた。母と弟の両方からガミガミと怒られていたが、警察には連絡をしないで済んだ。完全に日は暮れていた。母が夕食の準備を中断して、戸の向こうで姪っ子を大きな声で叱っているのが聞こえた。なんでも家から15分くらい歩いたところにある河原のそばを歩いていたら遅くなったという。所持金ゼロ。弟が渡した携帯の電源も切っていた。途中で方向がわからなくなったとも。薄暗い台所には火を止めたコンロに鍋がふたつそのまま置きっぱなしになっていた。
大事にはならなかったが、警察のパトカーがまたこの家の前までやってくることを考えると、私の気も沈んだ。いつかの晩、弟とつかみ合いの喧嘩になって、大声で罵倒しあったために、近所に110番されて、家近くまでパトカーがやってきた日の記憶がトラウマ化していた。暗い玄関のドアの向こうに、赤い車の灯りが近づいてきて、サイレンの音も聞こえた気がした。近所の人が「大声で喧嘩している声が聞こえる」と通報したのかもしれない。だれが何を言ったのか知らないが、そのパトカーから警官はうちへやってこなかった。私はドアを開けて庭に出てみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます