第28話

幸いにして、あちこちほっつき歩いていた姪っ子は17:30頃、家に戻ってきた。母と弟の両方からガミガミと怒られていたが、警察には連絡をしないで済んだ。完全に日は暮れていた。母が夕食の準備を中断して、戸の向こうで姪っ子を大きな声で叱っているのが聞こえた。なんでも家から15分くらい歩いたところにある河原のそばを歩いていたら遅くなったという。所持金ゼロ。弟が渡した携帯の電源も切っていた。途中で方向がわからなくなったとも。薄暗い台所には火を止めたコンロに鍋がふたつそのまま置きっぱなしになっていた。

大事にはならなかったが、警察のパトカーがまたこの家の前までやってくることを考えると、私の気も沈んだ。いつかの晩、弟とつかみ合いの喧嘩になって、大声で罵倒しあったために、近所に110番されて、家近くまでパトカーがやってきた日の記憶がトラウマ化していた。暗い玄関のドアの向こうに、赤い車の灯りが近づいてきて、サイレンの音も聞こえた気がした。近所の人が「大声で喧嘩している声が聞こえる」と通報したのかもしれない。だれが何を言ったのか知らないが、そのパトカーから警官はうちへやってこなかった。私はドアを開けて庭に出てみた。

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