第22話

老母にそれを言うと、「あの子は他の子に向かっていくタイプなのよ。他の子と遊ぶのは好きみたいよ」と言った。

実を言うと、姪っ子が不登校になりかけたことはある。小学校に入学してからのことだ。クラスメイトにやんちゃな男児がいるとかで、集団登校の際にその子に会いたくないから、学校に行かないと言い出したのだ。困った老母が小学校の担任に電話して相談して、様子を見ようということになった。

それでもいつの間にか不登校は解消していた。姪っ子にしてみれば、学校も嫌だが家の中はもっと嫌で、それならまだ好きな子もいる学校の方が面白かったようだ。

ある日、私が外出先から戻ると、玄関の前に植木鉢が置いてあった。朝顔のようだったが花は咲いていなかった。老母が「あれね。小学校でみんなで植えたのを持って帰ってきたのよ。観察日記をつけて出さないといけないの。宿題」と言った。植木鉢の横にはピンク色に塗装された小児用自転車が立てかけられていた。弟が姪っ子のために買った自転車だが、私は弟と喧嘩をしたり、姪っ子がつぶやく「キモイ」が聞こえてくると、あの自転車を無言で蹴り飛ばすのがつねだった。最近の機種は頑丈で、非力な私が蹴ったくらいでは何ともならなかったが。

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