第18話
弟は東京で働いているから、娘と遊んでやれるのも仕事が休みの時間に限られ、それでも私が驚くほどこまめに実家に戻ってきていた。新幹線代を考えると(弟がいくら稼いでいるのか知らないが)ものすごいことになっていそうだった。そんなことに交通費をかけるくらいなら、もっと広いアパートにでも引っ越して、娘と一緒に暮らせばいいでしょ、自分の娘なんだから自分で育てるべきよ、あいつだって在宅勤務しているんだし、家にいる時間は長いんだから小学生1人の面倒くらい見られるはず…。
母は「あの子だって毎日、午前様で働いているのよ。私があの子に言ったのよ、無理だから子どもはこの家に連れてきなさいって。男ひとりで女の子の面倒なんか見られるわけないからって」
私と母の言い争いは、日に日に激しさを増していき、口論の後で母は寝込むようになってしまった。私は、狭い家の中で自分に向かって「キモイ」と言ってくる、未知なる<生物>が増えただけで嫌で嫌で仕方がなかった。老母は、弟と孫娘のことを心から不憫がり、私の訴えを全面的に退けた。何を訴えても、私の言い分は却下された。
家の中には、私と老母とその孫娘しかいなかったが、雰囲気はぎすぎすとして、緊張が漂った。
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