第19話

姪っ子がこの家にやってきたのは10月ごろだった。最初、私は母にどのくらいあの子はうちにいるつもりなのか?と尋ねると、母は「そんなに長い期間にはならないわ、2~3か月じゃないかしら」と言っていた。

あの子がこの家に上がり込んできて、すぐに2カ月が経った。しかし、母は「頼むから…」と言うので、私は何も言えなくなった。あの子の母親は一体どういう神経で、こんな小さい子をほとんど知らない家に放置しているのだろう。

口約束は無し崩れになり、半年になり、1年以上になった。

弟はこまめに東京からこちらに来ていたが、毎週帰省していると交通費がすごいことになるし、感染拡大懸念で東京から出られない時期もあった。

弟と姪っ子が戸の向こうで笑いあっているのが聞こえてきて、カッとなった私が、戸を蹴り飛ばしたことがある。午後10時を超えていた。弟とはこの件で何度も家の中で怒鳴りあいになった。

1階の玄関の向こうは、闇が広がっていたが、時々自動車が家の前を通る時は、赤い色になった。その赤い色が消えないで、ずっと近づいてきた。怒声を聞きつけた付近住人が電話したのかもしれなかった。私たちは、闇の中で黙った。警官が家に来るかと思ったが来なかった。

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