第10話

母は「あのひと、自分の娘を<素晴らしい子ども>に育てたいらしい」

ある日、母は私にこう言った。

「幼稚園を4回も変えたのは、全部あのひとが気に入らないという理由だし。子どもにしてみると可哀そう」

弟は何も言わないの?

母が「何を言っても、自分に意見をする気か!?と大喧嘩になるし、そもそも相談をしない」。

インターナショナルスクール幼稚園に通わされていたが、早期英語教育に力を入れているだとか、お受験に強いだとか聞くと、そっちにすぐ変えてしまいたくなる性分らしかった。この私の娘なのだから、他の子とは違う、バカな子になる幼稚園に通わせても意味はない。

母は、稼いでいるからといって何なのかしらねぇ、欲しい欲しいと言って子どもを作ったのは自分なんだから、ちゃんと食事の世話くらいすればいいのに…とこぼしたが、直接、弟の妻に言っていくことは無かった。

そして遂に…と言うか、やっとと言うか、妻は下の娘の手を引っ張って、自分の荷物だけまとめて出て行った。妻と夫の双方に弁護士が入った、すでに裁判所から何かきた、という母の愚痴とも嘆きともわからない話を聞くと、結婚は不経済だなと感じた。

弟の話を聞いていると、独身の私としては、自分は結婚しないで正解だったと強く肯定できるのがよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る