第8話
結婚後、妻は病に倒れ、頭を手術して片目の視力を失って、10日間入院し、退院後、すぐに職場に復帰したがった。弟は看病やら、その時点でもう生まれていた2人の娘、そして自分の仕事に明け暮れていたが、いかんせん限界があった。手元の金もすごいスピードで目減りしていったが、妻が職場復帰したがるのはお金のため…ではなかった。純粋に自分のキャリアのためだった。
弟としても、学歴も年収も高い妻が自慢で、結婚前は夫婦共働きに賛成し、「ぼくはイクメンになります!」と両家の老親の前で宣言したほどだから、有言実行でこれまでずっと耐えてきたのだが、さすがに脳腫瘍が完治していない、片目が見えない、2人の未就学児がいる妻が職場復帰するのは難色を示した。もちろん妻は弟の反対など一蹴した。彼女の価値観によれば、専門職の妻の自分の方が年収が高いのだから、事実上の世帯主は自分であり、だれかにやりたいことを反対されるいわれなどない。
再び無理を押して働き始めたが、それと前後して、妻による上の娘への虐待が目にあまるようになった。医療系の専門職でストレスが多いことで知られる仕事でもあったし、その頃弟は仕事の関係で出張が多く、さらに過酷だったのかもしれない。
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