第6話

弟の妻とはついぞ会ったことがない。姉と弟で仲が悪かったから結婚式には行かなかったし(東京でなかったら出席していたかもしれない)、写真を見たが、弟は美人だと言っていたが、なんかきつそうな感じの顔つきの女が写っていた。あまり体が丈夫ではないのに、わが家にスィーツばかり送ってくるし、甘い物には目がないというので食事に気をつかうタイプでもなかった。

しかし、弟と妻の関係はどんどん悪化していった。弟は浮気も暴力も浪費も博打も縁がなかったが、一緒にいて面白いタイプはなかった。浮気しないで仕事ばかりしているだけではダメだったのだろうか。

母に訊くと、「そういう話じゃないの。あの妻は病気なの」

頭を開けちゃったこと?

「いや、もともと少し言動がおかしかった。結婚前に、彼女の親と顔をあわせるために東京に行ったときに、あのひとのお母さんが運転することになった。あのひとは横に座って、おかあさんを怒鳴り続けていた。あの形相を見て、あの子は大丈夫だろうかと、私は思った」と母はため息をついた。

なぜ、結婚に反対しなかったの?

「するもんですか。勝手に決めてきたんだから。あれも35歳過ぎていたし」

弟の妻は年上だったはず。

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