第3話
母は、私の時はそんなことはしてくれなかったが、弟が小学5年になってから、市内でも有名な進学塾へ通わせ始めた。母によると「あの子の友だちがずっとあの塾に通っていて、あの子も行きたいって言ったのよ。だから日曜日のテストクラスだけ」と言った。週一テストゼミに通っただけで2年後に弟は市内の入試が必要な私立、国立の全ての中学に合格して、地元ではもっとも難しいと言われる私立中高一貫校に入った。リベラルな父からすると、それは面白くなかったらしく「どうしてあの子をそんな塾に通わせたんだ?」と言っているのをふと耳にしたことがある。夜で戸の向こうの会話だった。
専業主婦のつねで、知り合いの学童の進学先や受験の当落の話が好きだった母。そんな母の期待に応えようとしていたわけではないのだろうが、受験勉強は真面目にやり通して一流大に進学してさっさと東京に行き、あまり父母と姉の住む家に戻ってこなくなった弟。
私は、どちらかというと父親似で、文系科目は好きだったが成績もあまりよくなくて、あとは絵を見たり描いたりするほうが好きだったが、実家から通える距離に美術関連の大学が無かった。大学受験の結果は私を落ち込ませたが、仕方なかった。
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