第2話
私は実家から歩いて行ける私立の女子大を出て小さな出版社にアルバイトとして入り、文章を書くのが好きだったのでシナリオ学校へ入って学び直し、ゲームシナリオを修正する仕事にありついて独立、フリーランスになった。
弟は東京の大学に進学し、技術系であったので、そのまま首都圏の会社に技師として就職し、あまりこちらに戻ってこなくなった。
私は若い頃、一時的にひとり暮らしをしていたことはあるが、フリーランスだったので仕事はどこででもできるので(在宅勤務が可能だった)盆正月など弟が帰省しそうな時期は事前に聞いて、つとめて顔を合わさなくても済むように旅行に出たりしていた。
一軒家とはいえ狭い家の中に180センチを超える弟の姿を見かけると、さらに家を狭く感じて、あんな気のあわない人間と一緒に生活をするくらいなら、行きたくもない旅行にでも行ったほうがましだった。
私も弟も両親から甘やかされ放題甘やかされていたが、母親が気にいっていたのは弟の方で、私は物心ついた時から母親にある種のよそよそしさを感じていた。母は弟をよく手名付けていたが、私はついぞ弟と気心があったとか、相手を理解できたという記憶がないまま五十代に突入した。
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