11.海賊退治
その1
「あにき!」
「あにき!」
決闘(?)の後から、エリオはマキオとサキオに纏わり付かれていた。
事の後、エリオ達6人は一旦、サリオ、マサオ、ササオの元へと戻った。
ボロボロのマキオとサキオ、涼しい顔をしているエリオを見ると、3人は事の顛末を聞かずとも、結果は分かったようだ。
サリオの得意気な表情を見る限り、この男はエリオがどういう目に遭うかは知っていたようだった。
そして、その結果も予想通りだったようだった。
それとは対照的に、マサオとササオは全くの予想外のようだった。
惣領家に取って代わる意思はないが、それなりのライバル心を持っていた2人だった。
その為の事前調査は済んでいた。
そこで、一泡吹かせてやろうという魂胆があった。
だが、こうもあっさりと返り討ちに遭うとは思わなかった。
あまりにも事前に得た情報と違いすぎた……。
と言う事なので、2人もサリオに対して、やり込められた口だった。
情報があったとは言え、この歳の頃はそんなに差がないと2男爵は思っていた。
したがって、現状を信じられないといった感じで見守る他なかった。
「あにき、凄かったぜ。
俺達の攻撃なんて、全然通用しなかった」
「そうそう、2人掛かりでも全然だった。
すごいぜ、あにき!」
聞きもしないのに、マキオとサキオは嬉々として話した。
ボロボロになって打ちひしがれている筈なのに、そうではなかった。
そんな話や2人の様子を見ると、最初に感じた以上な事が起きた事を認識せざるを得なかったマサオとササオがいた。
手に負えないやんちゃ坊主共がエリオに心酔していた。
「『あにき』は止めてください……」
エリオは苦々しくそう言った。
マサオとササオは、エリオと同じ歳とは言え、生まれたのは2人の方が早かった。
なので、それを指摘しようとした。
が、2人は顔を見合わせた後、
「兄者?」
とマキオがエリオが指摘する前に、そう聞いてきた。
「それ、同じでしょ……」
エリオは呆れてそう言った。
「兄上?」
サキオは間髪入れずに聞いてきた。
「それも……」
エリオは面倒臭くなってきていた。
「あにぃ?」
「あにさま?」
「……」
「……」
マサオとササオに色んな呼び名を言われたが、エリオは最早反応する気力さえなくなっていた。
漢の子とは不思議なもので、こうやって一つの切っ掛けで、わだかまりが消えるどころか、心酔までしてしまう典型例だった。
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