ハッピー・乳・イヤー

 除夜の鐘の音を聞くと、母乳が止まらなくなるのは、今に始まった話ではない。

 あのボォ〜ンという意味もなく性的に私の乳首を刺激する音色は、毎年108発もの母乳を噴射するのも無理はない。

 尚、『ハッピー・乳・イヤー』という親父ギャグは禁ずる。毎年聞きすぎて乳首に、いや、耳にタコができるというもの。

 今年も私の母乳を噴出する時期が訪れた。

 音というのは、人に様々な感情を与える。

 元気が出る音、母乳が出る音、人を感動させる音。

 何故、除夜の鐘の音を聞くと母乳が止まらなくなるのか、この時の私はどのような感情に狩られているのか。考察したことはあるが、除夜の鐘の音を聞くと母乳が止まらなくなる人間は、私以外に存在せず、あの『ボォ〜ン』という音は下劣なモノだと批判するフェミニストも存在しない。

 除夜の鐘の音を聞くことにより、毎年女性ホルモンが働いて乳腺が急激なる発達を遂げ、母乳の分泌が始まる原理は、私の人体のみでしか発動しない。

 一般的に女性は、子に乳房(ちぶさ)を吸われた時に分泌が始まることを考えると、私の乳首は除夜の鐘の音を聞くことで、子に乳房(ちぶさ)を吸われていると脳が錯覚し、母乳を分泌しているのだと推測できる。

 そう仮説を立てるのであれば、除夜の鐘とはすなわち我が子同然の存在であり、母なる私は、子の鐘の音を聞いて母乳を噴出する、一見すれば異常ともとれる状況は、ごくごく一般的な話だと説明できる。


 そう、我が子。

 祭りで賑わう人々に紛れ、除夜の鐘を眺める。

 大きく、猛々しく、荒々しく、それでいて、いじらしさを持ち合わせた我が子。

 そんな我が子の晴れ舞台を、見逃す母親ではない。

 やがて、お坊さんが鐘をつくための撞木を振りかぶる。


 ボォ〜ン!


 びゅっびゅっ!


 あっあっ……!


 出ちゃう……!

 この荒々しさ……!

 これが我が子の胎動なの……!?


 ボォオオオオオオオンッ!


 びゅるっびゅるっ!


 とても、我が子とは思えない……!

 この荒々しい音は、もう立派な一人の雄。

 除夜の鐘を我が子ではなく、一人の雄だとするならば、私は除夜の鐘で興奮する変態女だと認めることになっちゃう。


 ボォオオオオオオオオオン〜!!


 びゅびゅっびゅるるるるるっ!!


 ああぁ……!

 だめぇえ……!

 母乳が……母乳が止まらないの……!

 私のおニューの勝負服がお乳(にゅう)によって汚れていくのぉお……!



 ボォオオオオオオオオオオオンッ!!!!


 びゅぅうううううううううううっ!!!!



 らめぇええええええええぇえええええええええええええええええっ!!


 もう変態女でいいわぁあああああああああああああああああっ!!!


 ハッピー・乳・イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!

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