第2章 幼児転生~人型得たら本気だす~
第18節 迷子の迷子の【魔導書】さん 僕のお家はどこですか?
ここまでのあらすじ‼
親が政治家で若干問題のある家系に育った平凡(⁉)なWEB小説好きの男子高校生だった僕は、連日のWEB小説の読みすぎで寝不足のところを、道路を歩ていた猫を助けようとしてスマホ片手のながら運転スピード違反のトラックに轢かれてそのまま死亡!
そしたらどういうわけか、異世界のクソ人工知能によって無理やりに【魔導書】とかいうちょっと意味の分からないものに転生させられたぞ⁉
《抗議:クソ人工知能とはどういうことでしょうか? 当機/管理人工魂魄をそのような呼び名で呼称することに断固として抗議いたします》
だまらっしゃい。
とにかく、そんな感じで僕は【魔導書】に転生!
でも、クソ管理人工魂魄の野郎はポンコツだからチートとか無しでの転生で、その上目覚めた場所が世界でも特に難易度の高い【無限迷宮】とかいう意味の分からない場所だった!
おっかなびっくり外に出てみた僕は、空中に浮かぶ本みたいな魔物【
必死に逃げまどう僕だけど、そこに誘う声が!
声の主は【魔導書】集めが趣味の自称【魔王】のクソ幼女吸血鬼だった!
【ちょっと、自称「魔王」ってなによ、自称「魔王」って】
だから、だまらっしゃい!
まあ、とにかくそんなクソ吸血鬼幼女を、いろいろとあって屈伏させ、
《追憶:あれは、大変ひどい惨状でした》
【いや、本当に「魔王」として三千年は生きているけど、あれほどの屈辱を受けたのは大魔帝国の「大魔王」に次いで二度目よ】
え? むしろ一度はあるのが驚きなんですけど? やっぱりお前はくそざ──
【だまらっしゃい】
……ま、まあとにかくそんな感じで【魔王】アナスタシア・ヴァレンシュタインを屈伏させた僕は、そのまま彼女の力を借りて人型を得たぞ!
そうして意気揚々、【
しかしそこには恐ろしい魔物【冥府龍】の野郎が⁉
このままでは脱出できないというところに、現れたのは男女二人組‼
彼らの華麗な活躍によって【冥府龍】は追い詰められるも、ああ、なんということか!
女性マリア・フリードさんのお腹の中に赤ちゃんが!
そのせいで彼女の魔法が不発! マリアさんも気を失ってしまう事態に⁉
男性ジーク・フリードさんもマリアさんをかばって大怪我!
あわや二人のピンチ、というところに僕は勇気を出して飛び込んだ!
管理人工魂魄の力も借りて、僕はマリアさんが発動しようとしてた魔法を代わりに発動!
無事【冥府龍】をぶっ倒し、彼らに保護され僕はユリウス・フリードという新たな名前を得て、二人の子供となり、さらには妹のユリアも生まれて、前世では得られなかった暖かな家族を得たぞ!
ここまでが第一章の物語!
その後、僕は二人の祖国に戻って、実はマリアさんが王族の生まれだったとか、元彼女の婚約者がみっともなく横恋慕を入れてきてジークさんと僕でこらしめたりとか、その過程で国を揺るがす大きな陰謀を暴いてしまって、結果僕がマリアさんのお母さんである女王陛下に気に入られたとかいろいろとあったけど、
《疑問:それはいろいろとあったで済ましていい問題なのでしょうか?》
【そうよね。本当にあんなことを起こしておいて、いろいろとあったですませるものじゃないでしょうに。この国の宰相を失脚までさせたのよ?】
あーあー、ぼ~く~は~き~こ~え~な~い~!
とまあ、とにかくいろいろとあった二年!
僕ユリウス・フリードは無事七歳となり、そして現在──
「……どこだよ、ここ……」
……大勢の人々が行き会う道の端っこで僕は途方に暮れていた。
《発言:いや、本当にここどこなんでしょうね?》
【見事に迷子となったわね~】
呑気な脳内二人組に、イラァッ、としつつも、しかし僕が見やる先。
ここはジークさんとマリアさんの祖国である「魔導国」の王都グランシエテだ。
ジークさんが買い出しに行くから、と市場へ連れてきてもらったのはいいのだけど、でも人が多いものだからあれよあれよと迷子になってしまったでした、ちゃんちゃん。
とりあえず今日にいたるまでの物語をあらすじ紹介形式で思い浮かべてみたけど、それで現実が変わるわけもなく。
けっきょく僕は頭を抱える以外に、行動のとりようがなかった。
迷子の時の対処法は、とにかくはぐれた場所から動かないこと。
そうしていれば、探しやすいし、下手に動いてすれ違う可能性を減らせる。
と言う当たり前な知識を実践して早三時間。
そろそろ日が天辺にめぐって、お腹が空いてくる時刻になってもジークさんは現れない。
「どーしたもんかなあ」
いや、きっと気づいているはずだ。
まさか捨てられたとは思わない。
思わない、よな……?
いかん、ちょっと自信がない。
二人は優しいけど、この二年ほどでいろいろとやらかした記憶しかないので、ジークさんとマリアさんから愛想つかされて捨てられてもおかしくないとも思ってしまった。
《指摘:日頃の人徳かと》
【本当にねえ。いろいろとやらかしたからあの二人でも手を付けられないってなってもおかしくはないわよねえ】
お願いだから、だまらっしゃい!
ここ二年で妙に仲良くなりやがった脳内二人の連携に僕が涙目で脳内抗議をしつつ、脳内思考を必死に巡らす。
と、とりあえず落ち着け。
こういう時はもちをつくんだ。
ほら、臼を中心において、そこに真っ白で熱々なもち米を突っ込み、なんか絵本に出てくる金太郎みたいな恰好した屈強の男二人組を用意して、その片方に餅つき用の木槌を持たせて、いっせ~の! せいやそいやせいやそいやせいや! と餅をつく。
なんで脳内で餅をついてんだよ⁉
いかんいかん、本格的に不安で脳内がこんがらがってきた、脳内。
っていうか脳内って単語も何個言ったよ。
え~と、一、二、三、四……あ、七回か。
《訂正:正確には〝呑気な脳内二人組に、イラァッ、としつつも~〟という発言もありましたため、もう一つ追加で八回となります》
クソッ、脳内
うぅ、このまま脳内迷惑と会話をしていたら永遠に脳内って単語が増えて行って最後には脳内って単語で会話を始めてしまうかもしれないじゃないか⁉
その不安にやられて、おかげで、僕の目じりには涙が──
「……えっと、大丈夫かい?」
と、そんな声が目の前で生じた。
ビクッと僕は驚きながら顔を上げると。
そこには、青色の髪をしたどこか柔和な雰囲気の少年が立っていた──
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