第4話

アホな私 その四 万年雪

 村長おじさんの玄関の前の広い庭の先には鬱蒼とした杉林があり七~八十段の石段がある。石段を上ると広場になっていて、かやぶき屋根の観音堂があります。

正面には大きな鐘がぶら下がっていて、私たちはやたらと鳴らして遊びました。

八月のお盆近くの日に村人に声がかかります。

私たち子供は石段からお堂の回り、広場の草取りをします。お盆の間の一夜は盆踊りも有ります。私はまだ小さいので行った事はなかった。

村のお母さんたちはお堂を開けて掃除をします。昼はそれぞれ家に帰りごはんを済ませて又集まり作業をします。

午後は男の人たちが集まり杉の木と杉の木の間にロープを張って提灯を下げていました。

三時近くになるとチリンチリンと鐘を鳴らしキャンディ屋さんがきます。私は急いでおじさんを呼び止めます。私のおばさんは手際よくお金を渡して、白い割烹着の裾の両端を上手に持ち袋にしてそこにキャンディーを入れてもらって、みんな集まって~ と言って配ります。忘れられない光景が浮かびます。

私は皆が休んでいる時にひとりで行く楽しい所があります。川側の方で茨で覆われている石コロの階段が10個ほど下った所に清水がわいている場所があって小さな洞窟になっていてとてもヒンヤリして気持ちいい、洞窟の表面が黒くなっているそこの雪を持っていたカマで削るとなんと真っ白な万年雪が出てきます、なんだか懐かしい感じがします。

私は右手のカマで削り左手で受けて食べます。ここはひとりで行くのが楽しみでした。

他の人たちはこんな雪がある事を知っていたのかしら?温暖化が進み今ではこんな光景はありません。子供の頃は四季がはっきりしていてとても素敵に思いました。

そんな私も八十才になりました。

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