第2話

アホな私 その二 家の子にならない!

 今日も叔父の家にお手伝いをしに行った。

玄関に入ると何も用事を言われないので上がりがまちに腰を掛けて待っていた。おばさんが戸棚に饅頭があるから食べなさい、といってくれたので上がって戸棚の前に行った私は戸棚を開けたら饅頭が目に入ったが、グッといや¦な匂いが鼻を突いた。これはおばさんがいつも飲んでいる胃の薬です。ここの家のどこへ行ってもこの匂いが漂っています。 

お腹がすいているので饅頭を持って又玄関に座り饅頭を食べた。

上がりがまちの台は高いので、私の足は土間に着かず下駄をはいたまま足をぶらぶらさせて食べていた。さっきまで縫い物をしていたおばさんが私の隣に来て、和子ちゃん家の子にならない?と 言った。

えっ 嫌だと瞬間的におもった。

一瞬にわたしの家は兄弟が七人もいて、ここは子供がいない、不思議だな~と思った。

私は貧しい家のまぁるい食卓を思い出していた。おかずもないが幸せな家族を思い出していた。

おもわず首を左右に振っていた。おばさんは家の子になったらきれいな洋服を買ってあげるよという。私はさらに首がちぎれるくらいに強く振った。そしてこんなくさい家の子には絶対になりたくないと思った。今思えばなぜ口でいやだって言えなかったんだろうと思う。なにせ私は口を開いて自分の意志を伝えるのが苦手でした。中学生くらいになって母から「和子ヨ これからは自分の口で、痛い、悲しい、うれしいを言わないと誤解を招く事なるヨ」・・・・っていわれた。

その時はよくわからなかったけれどあの時いやですとちゃんと言えればよかったなァ おとなしい子がいい子ではないんだ。自分の意志を持たないと、と 思ったのはずうっと後でした。

 こんなアホ¦な私でも八〇才になれました。

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