第9話 ロンドンに迫る赤い星

結局10月頃まではドイツ空軍による爆撃が決定打を与えられない状況が続いていたが、11月に入ると戦況は一変した。


そう、赤色空軍の本格参戦である。

反共のヒトラーにとってソ連との共闘は愉快なものではないが、スピットファイアやハリケーンの登場によってそうは言っていられなくなっていた。


11月某日 ロンドン上空

「…チッ。これだけ多いとキリがねぇ…。」


「いくらこのスピットファイアが格闘戦に強いと言え、同時にソ連機を5機も6機も___」



Он полон пробелов…隙だらけだぜ…




スペイン内戦やノモンハン事件でドイツや日本に対する航空戦力の遅れを痛感したソ連は軍拡を推し進め、バトル・オブ・ブリテン開戦時点で1万5000を超える機体を有していた。だが、その多くがI-15やI-16に代表される旧型の機体などであったのもまた周知の事実である。

 

しかしイギリス空軍はドイツ空軍を同時に相手取っての防空戦闘を強いられているのであり、ソ連製爆撃機の性能の低さもドイツ・ユンカース社が開発した軽爆撃機Ju 88※が見事にカバーしてみせていたのだ。


11月に入ると本格的に始まった主要工業地帯への大規模爆撃を前に、イギリスが打つ手は残されていなかった。


一時ドイツ空軍はベルリン爆撃への報復として戦略的価値の低いロンドンへの大規模爆撃を主張していたが、ソ連側がこれを戒めた。




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※1935年に開発されたドイツの主力爆撃機。

Bf 109を50km/hも上回る523km/hでの飛行を実現し、急降下爆撃や雷撃をこなした。

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