第8話 幕間 霧の都
赤色空軍の参戦に揺れるイギリスであったが、実の所ドイツ空軍による英本土爆撃は必ずしも上手く行っているとは言い難い状況だった。
最も大きいのはイギリス・スーパーマリン社が開発した"救国戦闘機"スピットファイアの存在だろう。
この新鋭機はドッグファイトを意識した薄い楕円形の主翼を採用しているのが特徴であり、良好な視界を有する同機はドイツ戦闘機に対して優位性を発揮したのだ。
加えて大きかったのはイングランドの気候的特性である"霧"である。
史上最悪の公害と悪名高いロンドンスモッグほどではないが、レーダー性能もそこまで高くないドイツ機にとって霧による視界不良は死活問題と言える。
これはロンドンだけの問題ではなく、ドイツ機が多く襲来した東部エセックス等でも同様の苦戦を強いられた。
また、ポーランドを始めとする欧州大陸からの亡命パイロット達もイギリスの防空戦闘に一役買っていた。
しかし同時にイギリス側でも電力の供給不足によるレーダーサイトの不調が度々発生して地の利を生かし切れなかったし、霧による抗戦は時間稼ぎに過ぎない事をダウディングは誰より知っていた。
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