第2話 電撃的に

「ふぅむ…。やはりシュリーフェン・プランが使えなくなったのは痛いな…。」


アドルフ・ヒトラー。ナチス・ドイツの総統ヒューラーにして、欧州に再び戦火をもたらし、軍事大国ドイツを蘇らせた男である。そんな男は今、フランス侵攻計画の立案を巡って頭を悩ませていた。


「やはりベルギーのフランドル平原※を通って侵攻するしかないのでは?まさかマジノ線を強硬突破する訳にも行きませんし…。」


「総統閣下。ここは一つ、私に作戦立案を任せて頂けないでしょうか。」


「ほう、マンシュタインか。何か良い案でも?」


エーリッヒ・フォン・マンシュタイン。当時は一中将に過ぎなかったが、後に多大な戦果を挙げ、"ドイツ国防軍最高の頭脳"と呼ばれる男である。


「はい。マジノ線は正面突破出来ない、シュリーフェン・プランと同様の侵攻経路を使えないと言うのなら、アルデンヌの森を越えれば良いのです。」


「馬鹿な。戦車部隊があの泥沼の森を越えられるとでも?」


当時ドイツ軍では、沼地や森林が障害となって独仏国境北部に存在するアルデンヌの森を越えての侵攻は難しいと考えられていた。特に、陸軍省総司令官ヴァルター・フォン・ブラウヒッチュなどはマンシュタインの案に強く反対の立場を示していた。


「既にグデーリアン大将から装甲師団がアルデンヌの森を越える事は"可能"であるとお墨付きを頂いております。」


ハインツ・グデーリアン。当時の戦車戦における第一人者と目され、マンシュタインの計画に対して可能であるとの見解を示していた。


「ふむ、あのグデーリアンがか………。分かった、君の計画を採用しようじゃないか。」


「しかし…。」


「このプラン通りに進めば、確かに敵が油断している上、守りの手薄なセダンから北方への進撃を行える。ベルギー側とアルデンヌ側から敵軍左翼を包囲する事が可能だ。失敗は許されんぞ。」


「ええ。必ずや鉤十字ハーケンクロイツをパリに掲げてご覧に入れましょう。」


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当初はヒトラーもマンシュタイン計画に反対だったんですが、ここでは割愛と言う事で…。



※西ベルギーからフランス北部に跨るフラ ンドル地方に広がる平原。

 殆ど山地が存在しない。

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