The Introduction Of This Story~元カレは復縁の夢を見ない~
〝元恋人〟というのは、非常にややこしくてめんどくさい存在だと思う。
恋人として付き合っていた頃には友達以上に親密なのに、ひとたび何かのキッカケで別れてしまえばその親密性は失われる。
別れたのち友人として距離を置き直すにしても、恋人だった頃の記憶が消える訳ではない以上、他の友人と同列に扱うのは難しい。
また、別れたあとの気まずさから友人未満の知り合いとして距離感を取ってしまえば、絶交する程の致命的大げんかを繰り広げた訳でもないのに、全く顔を合わせなくなることすらザラにある。
その人物が過去に恋人だった事実があるだけで、元恋人が他の異性と親しげにしている場面を見てお門違いな独占欲的嫉妬を感じてしまうこともあれば、もうキッパリ別れた後だというのに、生活の端々に元カノの影を勝手に感じ取って勝手な感傷に浸ってしまうこともある。
元恋人という存在に対してここまでめんどくさい感慨を抱いてしまうのは、俺がまだまだ未熟の未練がましい男だからだろうか。
だが一つ言い訳をさせてもらうなら――俺は、かつて恋人だった彼女たちのことが本当に好きだった訳で――
囲夜雪鳥は――、いつでも俺の側に居てくれて、悲しく辛い時だって、明るく楽しく俺のことを支えてくれた。
常昼雨月は――、人として尊敬できる優しさを持ち、思わず抱きしめたくなるような健気な可憐さを有していた。
朝野晴花は――、俺にはない凛とした強かさを持ち、カッコよく、それでいながら年相応の少女のような愛らしさを有していた。
――でも結局、それらの理由は表面上のものでしかない。
その好きに込める理由を全て言葉にするなんてできる訳がない。
ただ好きだから、俺は彼女たちのことが好きだったのだ。
そんな彼女たちとの〝別れ〟を通して俺が覚えた情動は並々ならぬ訳で――
それを踏まえた上で、『個々人が持つ常識とは十八歳までに経験し学び得た偏見のコレクションである』という、かのアインシュタインの名言に習うのであれば――
絶賛常識を構築中の俺(十六歳)という思春期男子高校生が、非常にめんどくさい経験が今なお進行形で付いて回ってきている元恋人――引いては〝元カノ〟という存在に対して、色々とめんどくさい感慨を抱いてしまうのは致し方ないのではなかろうか?
むしろそうあって当然と言える。
さて、大変つまらない御託を並べてしまって恐縮ではあるが、
つまるところ、言うまでもなく、
そんなめんどくさい元カレの俺と、それと同じくらいめんどくさい元カノの彼女たちによって巻き起こされる、過去と現在の痴情がもつれにもつれまくったこの物語は――
どうしようもなくめんどくさい
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