第53話
アイカの言葉にイラッとしたものを感じたが、表向きは彼女と同じように平然を装っていた。
(コレって、マウントを取られている感じ……?)
今までチクリチクリと嫌な感じはあったが、ジュリエットに対して、ここまで露骨な態度を取るのは初めてではないだろうか。
(アイカ様はジュリエットが偶々選ばれたことを強調したいようだけど……)
リロイとアイカがどのくらい仲が良いのか、どんな関係性かは分からないので、ここは探りを入れてみるかと口を開く。
「アイカ様は、リロイ様と普段どんな話をするのですか?」
「何……突然。どうして、そんな事を聞くのかしら?」
「気になったので」
「…………。それは、色々とお話をするわ。それにリロイ様とわたくしは、一度パーティーにパートナーとして御一緒させて頂いた事もあるのよ?」
「へぇ……そうなんですね。私はリロイ様から直接、ベルジェ殿下には好きな方がいるのだと伺いました」
「…………!」
「アイカ様は私が可哀想だからと仰いますが、それは違うと思います」
「何故……そう言い切れるの?」
「もしリロイ様がベルジェ殿下の好きな方がアイカ様だと知っていたら、私とパーティーに参加する事を止めるのではないでしょうか?」
「!!」
「それに……今回のペアはリロイ様の提案なのですよ?」
「ーーーッ」
アイカの余裕たっぷりの表情が崩れたのを見逃さなかった。
ジュリエットに嘘がバレているとは夢にも思わなかったのだろう。
それにペアの決まり方はキャロラインもルビーも言っていないと思い、話を進めてみたのだが大正解のようだ。
「あのリロイ様ならベルジェ殿下の為に動くような気がしますが……」
「…………何が言いたいのかしら?」
この手の嫌味はジュリエットになる前のOL時代に山のように乗り越えてきた。
やられっぱなしで舐められるのは避けたい所だ。
それに噛みつかれたら噛みつき返すのがマイルールである。
特に合コンなどで、この手の奴は沢山見てきたので扱いには慣れたものである。
故に………負ける気はしなかった。
「ベルジェ殿下がアイカ様が好きなのは本当ですか?」
「…………。えぇ」
「あぁ、なら良かったです」
「……っ、なにがかしら?」
「フフッ、だってアイカ様が勘違いをしていたら可哀想ですもの」
「ーーーッ!!」
「もしコレが嘘だったら…………ねぇ?でもアイカ様がご自分でそう仰るのなら、そうなのでしょうね」
此方を睨み上げるアイカを見て、クスリと余裕たっぷりに悪い笑みを浮かべた。
違和感を感じて、つついてみると見事にボロを出した。
アイカは明らかにベルジェとパーティーに出席する事を気に入らないと言いたげだった。
(ベルジェ殿下に好きな人が居ることはルビーお姉様やキャロラインから聞いていてもおかしくないと思ったけど、それをジュリエットと二人きりの時にわざわざ言うということは……)
ジュリエットを排除したいという思いが透けて見えている。
いつもならばこのやり方でジュリエットを上手くコントロール出来たのだろう。
だが、今回ばかりはそうはいかない。
何も知らないフリをしていればいつも通りの関係に戻れただろうが、ルビーやキャロラインの為にも此処で引くという選択肢はなかった。
「それに今回はキャロライン王女殿下とお揃いのドレスを王家御用達のブティックで選んで頂いたのです。アイカ様も次回にベルジェ殿下に誘って頂けたらいいですね」
「……っ!」
マウントを取られたらマウントを取り返す……基本である。
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