第35話
ルビーは「ルビー・カイネラですわ」と優雅に挨拶しているが、不機嫌そうなキャロラインとニコニコと人当たりの良い笑みを浮かべているリロイを見てヒシヒシと嫌な予感を感じていた。
「……ジュリエット・カイネラです。ようこそお越し下さいました」
「あはは!そんなに嫌そうな顔をしないでくれよ」
「…………」
「最近、お兄様達がお世話になっていると聞いて会いに来て差し上げましたのよ?それに……」
「そうそう、そういう事……!僕にコソコソ隠れて通っていたから様子を伺ってたんだ」
「ちょっと!わたくしの言葉に被せないで下さいませッ」
「相変わらずキャンキャン煩いねぇ」
「……なんですって!?」
これまた我儘王女という言葉がぴったりと当てはまるようなキャロラインの台詞と見た目に目を見開いた。
(第二の悪役令嬢が、ついにやって来た……!!)
恐らく、物語的には第二章に差し掛かったのだろう。
そしてバーズという家名を聞くに、リロイはモイセスの弟で間違いない。
これまた面白いくらいに真逆な性格を持っている兄弟達である。
モイセスは堅物で無愛想に見えるが誰よりも優しくて包容力がある。
しかしリロイは……この様子を見るに、外見は可愛らしいが絶対に腹の中は黒いと直感的に思っていた。
この掴めない性格を見る限り、なかなかの曲者に違いない。
(見た目は猫のように可愛らしいけれど……中身はライオン、間違いないわ)
そしてベルジェは完璧王子と呼ばれているが、こうして共に時間を過ごすようになって分かった事だが、意外とオドオドしているし控えめである。
一方、キャロラインは王族といった感じに堂々としていて煌びやかなオーラを放っている。
性格的にみると真逆に見えるベルジェとリロイが友人であるのも意外な組み合わせだと思った。
それにこのタイミングで第二の悪役令嬢であるキャロラインと、ベルジェに近しい立ち位置にいる令息が同時に出てきた事で、ある事が頭を過ぎる。
(もしかして……!リロイ様は当て馬なんじゃ……!?)
となれば自然と、キャロラインの好きな人は『リロイ』という事になる。
そんな二人のやり取りを注意深く観察していいると、小競り合いは酷くなっていくばかりで、本当にキャロラインはリロイの事が好きなのかを疑ってしまう。
リロイにひたすら噛み付いているキャロラインを観察していると……。
(…………あ、しっかり嬉しそうだったわ)
ほんのりと赤くなった頬とニヤニヤとする口元を扇子で隠しているキャロラインの表情は此方からは丸見えである。
(ツンデレ属性か……可愛いなぁ)
そしてルビーの何がリロイの興味スイッチを入れるのか気になるところだ。
まるで映画を見ているような気分で三人の様子をワクワクした気持ちで見つめていた。
「お兄様とモイセスから色々と聞いておりますけれど噂通り、すっごい美人ですが、それだけの詰まらない女にはお兄様の隣に並ぶ資格はなくってよッ!!!」
「「…………」」
ピシッ!!と音が鳴る程に指を差されているが、あまりの勢いにポカンとしていた。
沈黙が流れる中、静かにリロイが口を開く。
「……そんなんだから友達できないんだよ」
「ーーうるっさいですわねッ!!!リロイに言われたくないわっ」
「僕は友達、いっぱいいるよ?」
「~~~っ!!」
「「……」」
仲が良さそうで何よりである。
「で、今日はもうすぐ兄上達が来る予定だろう?」
「……はい」
「それにもうすぐ王家主催の大きなパーティーがある」
「……はい」
「僕、君にパートナーをお願いしようかと思って!」
「……はい!?」
「!?!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます