第34話
あの日から数週間後……。
ルビーは思い悩む日々を過ごしていた。
一方、ジュリエットは今日もハーブティーを飲みながら考えていた。
記憶が戻ってから初めてのパーティーの日が近づいて来た。
王家が主催するパーティーは華々しいものだ。
しかしジュリエットの年齢にもなると、婚約者と参加する事が当たり前になってくる。
此処で婚約者やパートナーと参加出来なければ、確実に『売れ残り』と言われてしまうからだ。
今まで、そう言われない『例外』はルビーやベルジェ、モイセスだけだろう。
お茶会やパーティーに何度も何度も参加して、ルビーに靡かない婚約者を見つけたかったのも、今回のパーティーで恥をかかない為だろう。
(こんなに若いうちから特定の相手を決めるのも大変よね……令嬢達は特に)
道を間違えてしまえば結婚すら危うくなってしまう。
そしてジュリエットは一回、失敗してしまっている。
マルクルスと婚約を解消して、直ぐに縁談がくる訳もなく平和なのはいいが、貴族としてどうなのかと問われるとまた話は違ってくる。
両親に相談しても今回ばかりは微妙なラインのようで、最終的に判断を任されていた。
(誰とパーティーに参加した方がいいのかしら……?それとも今回は一人で出た方がいいの?)
マルクルスの件からまだ少ししか経っていない。
他の令息と仲良さげにパートナーを作って出席するのも微妙。
全面的にマルクルスが悪い事は周知の事実ではあるが、やはりパートナーが居ないと訳あり令嬢の印象を残してしまう為、それも微妙。
(……うーん、でも今回は一人でいっか)
特に気にする事もなく、今回はドレスをどうしようかと悩んでいると扉の隙間からジリジリと感じる視線。
「ルビーお姉様……そこで一体何してるの?」
「あ、あのね、ジュリエット……!聞きたいことがあるんだけど、今回のパーティーは誰と参加する予定なの?」
「誰と?まだ婚約を解消したばかりですし、今回は一人で参加しようかと思ってますけど……」
「一人でッ!?」
「えぇ、やっぱり良くないかしら?」
「い、いいえ、そんな事ないと思うわ!わたくしも一人で参加しようと思っていたし……」
ホッと胸を撫で下ろしながらパーティーに「一人で参加する」と言ったルビーを見て首を傾げていた。
「お姉様は……ベルジェ殿下と参加しないのですか?」
「……ベルジェ殿下?」
「はい、お父様とお母様に聞きましたわ。二人の仲は順調だと」
「…………えっと、それは」
「ドレスはいつ買いに行くのですか?」
「それは違うの……!誤解なのよ、ジュリエット!」
困惑するようなルビーの表情にハッとする。
そういえば、ジュリエットはいつもルビーが何か言うと「自慢ばっかりしてんじゃないわよ」「ふざけんな」と責め立てていた。
恐らく、それを気にしての事だろうと思った。
「私の事はもう気にしなくてもいいですから……!」
「!?」
「遠慮なくお二人で楽しんで来て下さい」
「…………ぁ」
尚も複雑そうな表情をしているルビーを見て、気にさせないように何事もなかったように話していると……。
「あ……!見ぃつけた」
「ちょっとご挨拶もなしに失礼ですわよ!」
「固い事言わないでよ、別に公の場じゃないんだしさ」
前からやって来るのはジュリエットが今まで関わったことのない令息と令嬢の姿。
だけど見覚えのある髪色と瞳の色、そして派手なドレスにグルグルに巻いた赤毛を見てある名前を思い出す。
「わたくし、キャロライン・ルディ・ジークサイドですわ!!」
「僕はリロイ・バーズだよ。宜しくね」
「何故此処に……?」と疑うような視線をものともせずにリロイは「カイネラ子爵達にはきちんと伝えてあるよ!サプライズがしたいってね……!」と、笑顔で言われてしまえば突っ込む気もなくなってしまう。
どうやら根回しはバッチリのようだ。
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