第15話
(ルビー嬢に今、ジュリエット嬢の心境を聞き出すのはどうだろうか。今ならまだ間に合うかもしれない……!)
何故ルビーではなく直接ジュリエットにコンタクトを取ろうとしなかったのか……この時は全く疑問に思わなかった。
恐らくジュリエットと話す事に緊張して、上手く振る舞えない事が分かっていたからかもしれない。
カイネラ子爵に手紙を出そうと決めた事で、なんとか気分が持ち直した。
しかしこの何気ない選択で後々に大ダメージを受ける事になるとも知らずに、ジュリエットの事を詳しく聞こうと令嬢達に声を掛けた。
「お嬢様方、続きを聞かせて貰ってもいいかな?」
「ベルジェ殿下!?」
声を掛けると令嬢達は顔を合わせて、とても驚いているようだった。
「嘘……!ベルジェ殿下からお声がけ頂けるなんて」
「先程の話の続きを聞きたいんだが……くれぐれも内密に頼む。相手に迷惑を掛けたくはないんだ」
令嬢達は「まぁ」と口元を押さえていたが、そんな事よりもジュリエットの事が気になって仕方なかった。
しかし何故だか分からないが、どうしてもルビーの話に逸れてしまう。
合間にジュリエットの話を挟みつつ、上手く誘導しながら話を聞こうとするものの……。
「そういえば、ルビー様はまだ婚約者はおりませんわよね?」
「あぁ、それは……そうみたいだね。ルビー嬢には話したい事があるんだが、それでジュリエット嬢はマルクルスとどんな感じなのかな……?」
「ああ、失礼致しました。マルクルス様についてですわね!」
「え……?あぁ」
「マルクルス様はご自分が好きというか」
「そうですね……あとは自慢が多いというか自意識過剰というか」
「えぇ、それにずっとルビー様に付き纏って……!」
「ちょっと!そんな事を言ったらベルジェ殿下が気を揉んでしまうわ」
「それでジュリエット嬢は……っ」
ルビーの話ではなく、ジュリエットとマルクルスが今、どんな関係なのかを聞こうとしていたが、令嬢の一人が「そういう事ですわね!」と声を上げる。
「ベルジェ殿下は、ジュリエット様の事が気になるのですね」
「そうなんだ!それで……っ」
「ジュリエット様は、ずっとルビー様を嫌ってらしたものね」
「ルビー様に影響されない婚約者を探していらしたわ」
「そうそう。ずっと婚約者を探していて手当たり次第って感じだったから、殿下も、もしルビー様に……」
「そうではなく……!」
「あれだけ美しいんですもの。いつも殿方に囲まれておりますものね。羨ましいという気持ちも分かりますけど、あんな風に言う事ないのに」
「でもベルジェ殿下とルビー様、お似合いになるでしょうね!」
「ーーージュリエット嬢の事を詳しく知りたいんだッ!」
ジュリエットの事が気になりすぎて勢いよく問いかけてしまう。
もしかしたらまだチャンスがあるかもしれない、そう思うと居ても立っても居られなくなった。
「ベ、ベルジェ殿下……?」
「あっ……!その、特に深い意味はないのだが」
あまりにも必死になっている自分が急に恥ずかしくなり赤くなった頬を隠すように顔を背けた。
そんな様子を見て目の前にいる令嬢達も照れているようだった。
「まぁ……そんなにルビー様のことを!」
「……?」
「なんでもありませんわ!」
「殿下が照れていらっしゃるわ!可愛らしいわね」
「そうよね。ルビー様を目の敵にしているジュリエット様と、ルビー様の近くにいる殿方はやっぱり気になるのよ」
「ふふっ、そうね」
「???」
何やらコソコソと話している令嬢達を見て首を傾げた。
なかなかジュリエットの事を聞き出せずに歯痒い思いをしていた。
それでもこれ以上、不振に思われてはいけないと言葉を飲み込んだ。
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