②帰ったら……
「ただいまー」
「おっ、お邪魔します」
そういつもの様に真人くんの家に入ったのだけど……。
「……?」
「どうしたの?」
なぜかいつもと違う雰囲気に気がつきつつ、真人くんに尋ねた。
「いや……あいつがいねぇ」
──あいつか。
真人くんは『お兄さん』の事を「あいつ」と言う。
元々真人くんとお兄さんは兄弟は兄弟でも『義理の』が頭につくらしく、真人くんは少し邪険にしながらも仲良くしている。
──まぁ、そもそもお兄さんがワザとらしい言い方をする時があるし。
でも、なんだかんだ言い合いながら仲が良さそうで……兄弟のいない私は少しうらやましい。
「って、お兄さんがいないの?」
「あ、ああ。今日向井を連れてくる様に行ったのはあいつなのに」
「え、お兄さんが言ったの?」
「ん? ああ。向井が本当の舞を知っているみたいだからって」
──た、確かに「本当は二人じゃないかな」とは言ったけれど。
それでも昨日の今日やる事になるとは思っていない。
──言いたい事はたくさんあるけど、今はとにかくお兄さんの居場所かな。
私は気を取り直す様に軽く「コホン」とせきをして「とりあえず」と前置きをして……。
「どこか行くって聞いていない?」
そう尋ねると、真人くんが言うには「お兄さんは今日、舞で使った道具を返しに行った」らしい。
「舞の道具?」
「ああ。正確には練習で使ったモノとかだな」
「それって昨日のうちに返さないの?」
「昨日はなんだかんだ慌ただしいからってあいつが」
「そうなんだ」
「それに『調べたい事がある』とも言っていたな」
「調べたい事?」
「ああ。詳しくは知らねぇけど」
でも、真人くん曰く「いつもは昨日のうちに道具を返している」との事で、どうやらお兄さんは調べたい事のためにワザと道具を昨日返さなかった様だ。
──ん?
私はそこで引っかかりを覚えた。
「でも、カギかかってなかったよね」
「ああ」
ついさっき真人くんはいつもの様に家を開けた。
──それを考えると……。
「ちょうど今だけちょっと家を開けているだけなんじゃ……」
「そ、そうか」
私がそう言うと、真人くんも納得したらしい。
「わっ、分からないけど」
そう付け加えると、真人くんは「分かんねぇのかよ」とクスリと笑う。
──良かった。
何となく、今の真人くんがいつもと違って見えて、思わず話しかけてしまった。
「でもまぁ、確かにそうだよな。あいつが家のカギもかけずに外に行くとは思えねぇし」
「うっ、うん。だからすぐに帰って来ると思うよ」
そう話していると……。
「おや、二人共玄関でどうしたんだい?」
「あ」
「あ」
ちょうどお兄さんが帰って来た。
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