⑦ここ最近の真人くんの様子
「……」
私はお兄さんの事をよく知らない。確かに「ついこの間まで赤の他人だったのだから当然」と言われてしまえばそれまでの話だとは思う。
それに「自分のおばあちゃんの事もあまり知らなかったな」とここ最近は反省と一緒に少し凹んでもいる。
――お兄さんや真人くんは「気にしなくていい」って言ってくれたけれど。
お兄さんや真人くんの事はともかく、やはり家族の事になると……思うところはやっぱりある。
――それにしても。
ついこの間。そのお兄さんは私の話を聞いてすぐに「ちょっと用事を思い出した」と言って出て行った。
――その後の休みの日は家を空けていたのか電気がついていなかったんだよね。
そして月曜日の今日は真人くんいつもであれば学校に来るはずだ。
――でも、今日はちょっと遅いような?
基本的にこの学校の生徒は集団登校をしている。
――ただそれは「遅刻」か、もしくは何かしらの事情があれば……だけど。
でも、真人くんが遅刻しているところを見た事がない。
「おはよう」
そんな事を考えていると、当の本人である真人くんが現れた。
「おっ、おはよう」
そう返すと、真人くんは机にランドセルを置いてそのままイスにドカッと座った。
「……」
何となく話しかけづらい雰囲気からチラッと様子を真人くんの様子をうかがうと……。
――うっ、うわー機嫌悪いなぁ。
ここ最近の月曜日の真人くんはいつも不機嫌でいる事が多い。だからなのか、心なしかクラスメイトの女子たちもいつも以上に遠巻きに見ている。
――でもそれは多分。親戚の人たちが原因なんだろうけど。
「……なぁ」
「! なっ、なに?」
――珍しい。学校で話しかけてくるなんて。
「向井のおばあさんのお葬式の時。向井に話しかけてきたヤツがいたんだってな」
「え、うん」
「そいつの顔って覚えているか?」
「え、うーん」
思い返して見たけれど、正直怖かったから顔までは見ていなかった。
「ごめんなさい。見て……ない」
「……そうか」
「それがどうかしたの?」
「いや、大した事じゃねぇんだ」
そう言うと、真人くんは「ふぁ」と眠そうにあくびをした。
「眠そうだね」
「うん? まぁな。でもまぁ、舞が終わればあいつらと一年関わらずに済むんだから大した事ねぇよ」
真人くんはそう言って「はは」と言って笑う。
「そっか」
「もしかしたら、舞自体は続いても休みの日にわざわざ親戚の家に行かなくても済むかもしんねぇし」
何やら真人くんが言った様に聞こえ、私は思わず「ん?」と聞き返したけれど、真人くんは「なんでもねぇよ」と言ってそのまま机の上で寝そべってしまった。
「まっ、真人くん。すぐに読書の時間になるよ?」
そう言うと、真人くんは「時間になっても起きなかったら起こしてくれ」と言ってそのまま無言になり……。
――寝ちゃった。
真人くんが疲れている事は分かっているからこそ「ダメだよ」とも言えず、私はとりあえず言われた通りにチャイムが鳴ってすぐに真人くんを揺すって起こした。
まぁ、起こした真人くんは……朝の時以上に不機嫌だったけれど。
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