⑤二本のしっぽを持つねこの話
「でも『二本のしっぽ』となると……考えられるのはやっぱり『ねこまた』かな」
私と真人くんはオレンジジュースだったけれど、お兄さんはお茶を飲んでいる。なんでも「甘い物は苦手」なだそうだ。
「ねこまた?」
「ああ、ねこまたの特徴はしっぽが二本ある事だな」
「もちろん、事故とか怪我で……って事は抜きとしてだけどね」
それはそうだろう。
「ただ、ねこまたは簡単に言うと『ようかい』なんだよな」
「ようかい?」
「そうだね。まぁ、ようかいに分類されるかな」
「ようかい」
二人から『ようかい』と言われ、私は学校の図書室で読んだ本やテレビで見た事のある様なモノを想像した。
――あれ、でも。
「あの『黒いカタマリ』と同じもの……とは思えない」
「まぁ、大まかに分けて……だからね」
「正直なところ、ようかいもゆうれいも似たようなモノって事になっているからな」
ため息混じりに答える真人くんに対し、私は「そうなんだ」としか答える事が出来ない。
――色々、大雑把なんだなぁ。
よくは分からないけど。
「ようかいやゆうれいは元々あの『黒いカタマリ』が最初だからね」
「?」
お兄さんは笑顔でそう言うけれど、いまひとつピンと来ない。
「うーん……。要するにようかいもゆうれいも、元は『黒いカタマリ』だったって事なんだけど」
「え!」
それは驚きだ。
「俺たちもどうしてそうなるのかは分からねぇ。しかも『黒いカタマリ』からどうなってようかいやゆうれいになるのか分からなかった」
「そうなんだよね。最初でこそただの『黒いカタマリ』だったのに、気がついたらゆうれいになっていたりようかいになっていたり」
そして、おばあちゃんが私に言っていた様に『黒いカタマリ』の時であれば、見える人間が何かちょっかいをかけない限り何もしてこないとの事だった。
「だからあの時は正直驚いたし、僕たちには見えていなかった事にも驚いた」
「――つーか、向井からは何もしてなかったんだろ?」
「うっ、うん。目が合っただけで」
「ひょっとしたら、乗り移ろうとしていたのかも知れないね」
「え」
「彼らはより強い力を欲するからね。見える人間はそれだけ強い力を持っているから、則ろうとする」
「……」
私はあの黒い一つ目の視線を思い出し……思わずゾッとしてしまった。
「多分、久美子さんはそういった事に巻き込まれない様にかえでちゃんに教えていたんだと思う」
「弱い『黒いカタマリ』の時はとにかく逃げる。だから向井のおばあさんの言っていた『無視』をするのが一番手っ取り早い対処法っつーワケだ」
「……」
ここでもずっとおばあちゃんに守られていた事に気がつき、私はまた泣きたい気持ちになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます