④不思議な猫


「……」


 ――猫と言えば。


「どうしたんだい? かえでちゃん」

「あ、ううん。そういえば、この間の休みの日。外にフラッと出た時にねこを見たなって思って」

「ねこ? そんなのどこにだっているだろ」


 そう、真人くんの言う通りねこはどこにでもいる。


「うん、そうなんだけど」


 しかし、私が見たねこは普通と少し変わっていた。


「……かえでちゃんがわざわざそう言って事は『普通じゃない』って事なのかな?」

「パッと見た感じは普通だった。でも、よく見たら……しっぽが二本あって」


 その言葉を聞いた真人くんは「二本?」と確認する様に私の方を見る。


「うっ、うん」


 ――って、もう食べ終わっているし。


 お皿を見ると、いつの間にかさっきまであった黒ねこのケーキはなくなっていた。


 ――私はまだ手を付けてすらいないのに。


「ああ、食べながらでいいよ。それにしても、二本のしっぽを持ったねこか」

「他の人の反応はどうだった」

「え」

「ねこがいたら近寄って行くヤツの一人や二人くらいいそうなもんだろ」


 ――確かに。


 かわいいねこを見たら触りたくなってしまう人もいるだろう。だから真人くんの言っている事は何となく分かる。


 ――でも。


「私が見たのはショッピングセンターの駐輪場だったから、あまり人がいなくて」

「そっか。それなら仕方ないね」


 ショッピングセンターに来るのは大体が車でに乗った家族が多く、自転車で来る人はあまり多くはない。


「それに、私に気が付いたのかサッサといなくなってしまって」

「つー事は、目は合ったってワケか」

「それは……うん」

「なるほどな」


 ――正直、目が合った……というよりは。


 物音に気が付いて音のした方を見たら、偶然ねこがいたというだけだったのだけれど。結果として「目が合った」のだから、うそではない。


「まぁ、今回は『偶然会った』っていう感じだろうね。それに、この間の『黒いカタマリ』とはちょっと違うかも知れないし」

「?」


 ――一体どういう事なのだろう?


「ああ、いや。全然違うってワケじゃなくて、おおざっぱに言うとそのねこもこの間の『黒いカタマリ』と同じなんだけど……なんていうか種類が違うって感じなんだよ」

「??」


 お兄さんとしてはこれでも簡単に説明してくれたと思うけれど、残念ながら私にはイマイチ分からない。


「あー、簡単に言うと……だな。犬にもトイプードルとかチワワとかいんだろ? それと同じでおおまかにいうと『黒いカタマリ』になるが、細かく分けると違うって話だ」


 真人くんはそう言いながら「分かったか」とチラッと確認する様に私の方を見る。


 ――なっ、なるほど。分かりやすい。


「うん、分かった」


 私がそううなずくと、お兄さんは「いやー、真人がいると助かるよ」と言って笑うと。


 真人くんは「あんたの場合は簡単にしているようで全然簡単じゃねぇんだよ」とどことなく照れているような表情で飲み物を一口飲んだ。

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