④気になる転校生の言葉
放課後。学校から帰って誰も帰っていない自宅で私は一人ボーッとしていた。
──お父さんもお母さんもいつも通り日付が変わるくらいに遅く帰って来るだろうし。
だからいつも夕飯は自分で適当に作っている。
──冷蔵庫のモノを使えば怒られる事もないし。
なんて思いつつ。
「まぁ、ここ最近はほとんど顔も合わせてないけど」
正直、このままいくと両親の顔すら思い出せなくなるかも知れない。
──休みの日もなんだかんだでいないし。
一応朝食の準備はされているので、そこはありがたく頂いている。
──いや、コレがむしろ「当たり前」なのかな。そういえば、最後に買い物とかどこかに遊びに行ったのって……いつだろう。
「……あ、なんか悲しくなってきた」
本当に今更な事を自分で考えておきながら何とも笑えない話である。
『……何が起きても知らねぇからな』
そんな時、ふと今朝東条くんが最後に言った言葉を思い出した。
──コレって……。
多分、東条くんが言いたかったのは「子供だけで夜の学校に行って事故や事件に巻き込まれても知らない」という意味で言ったのだろうとは思う。
──でも。
なぜか私の頭の中にあの『黒い霧』が過ぎるのだ。
「……」
──思えば。
東条くんとは朝のあいさつやプリントを配る時に少し話すくらいで、特に話す事もない。
──ただ。
なぜか東条くんからはものっすごく「見られている」と感じる事があるのだ。それはさながら……。
──あの「黒い霧」に見られている様な。
しかし、東条くんはまだ目があるため「どこを見ている」とかなどが分かる。
──私があの「黒い霧」を苦手な理由って、そこなんだよなぁ。
とにもかくにも「黒い」という事だけしか分からず「視線の様なモノを感じる」というのは……不気味で仕方がない。
──あ、そうだ「黒い」といえば。
東条くんが転校して来た日にゴミ捨て場で出会った「黒くて長い髪のお兄さん」を思い出した。
──結局。
あのゴミ捨て場で見た「黒い霧」はあの日以降見る事はなく、またお兄さんを見る事もなかった。
──でも。
ポストを探していたという事は、きっと引っ越して来たばかりだったのだろう。
──また会えたらなぁって思っていたんだけど。
そうそう上手くはいかないらしい。
「はぁ、ん?」
思わずため息をこぼした時、突然普段は押されないチャイムが鳴った。
「誰だろう?」
この家のチャイムが鳴る事はほぼほぼない。
──宅配便が来る事もないし。
そんな事を考えつつ玄関に付いている小さなガラスから外にいるチャイムを鳴らした人を確認すると……。
「……」
そこには着物を着た黒く長い髪を一つにまとめた男性が立っている。
──ひょっとして……。
この特徴的な見た目には覚えがある。しかもつい最近。
「!」
もう一回チャイムが鳴り、私は急いでカギを開けた。
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