六節 もう一度
爽やかな風が顔一面に吹き付けられる。
「おはよう。」
あの声だった、忘れていたはずが、良く覚えている。
恐る恐る目を開けると、やはりあの草原だった。
「あの…」
「ん?」
「向こう…っていうか、その…私の体、乗っ取ろうとしました?」
前に、昨日だろうか、此処に来た時、向こうで会おうなんて言っていたから、それを怪しく思っての言葉だった。
「えーっと、信じてもらえないかもしれないけど、レニスちゃんの中には、レニスちゃんと、私、あともう一人、居るんだよね。」
「え?」
爽やかな風がピタリと止んだ様な気がした。
「いやー向こうで会おうなんて言ったけれども、別の体が無いと私は外に出られないんだぁ~さっきはあの人がそれこそ起きて、貴女の体を使おうとしたから、頑張って眠らせたけどね。」
姿の見えない少女と話している時点で、夢テンションだが、彼女の言っている事を何の疑いも無く信じてしまう。
「誰なんですか…その方は…」
「ん?だれ…かぁ…そうだなぁ、消えちゃいそうな人なんだよね、名前は分かんないや、でも、あそこで見つけたんだ、私達の家で。」
レニスの足元が沈み始める。
「あ、時間みたい、もし覚えてたら、あのエルフに、此処に居るけど、今は眠ってるって伝えてあげて、あと器があればこっちはいつでも渡せるとも言ってあげてね。」
二度目なのに怖かった、分かっていても、止め処なく沈んでいくのは怖かった。
「分かりました…覚えていたら…」
怖いはずなのに、怖気付いた様子もなく返事をしている私、夢テンション恐ろしや。
顔が沈むと目が覚める。少し涎が口から垂れている様に感じて、手の甲で拭うと、青い液体が甲に伸びていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます