第2話
……と思ったが、それは目の前の本棚に思いっきり身体をぶつけ、動きが止まった。
その物体はよく見ると、耳が丸く、身体は灰色の毛で覆われている。
そして、長いひげが付いていて、かなり小柄な体型だった。
「ね、ネズミ……?!」
紬は慌てて、小動物と距離を取った。
「失礼な、ネズミじゃなくて、ネコだ!!」
小動物は、二本足で立ち上がり、りゅうちょうに言葉を発しながら、紬をにらんだ。
「ネコがしゃべった……?!」
紬は驚きのあまり、大声を上げた。
紬が声を上げると、ネコはうるさそうに両手で耳をふさいだ。
「うるさいなぁ……ネコがしゃべるくらい、普通じゃないですか」
ネコが敬語で話したり、二本足で立ったり、ネズミみたいな見た目だったり……。
ツッコミ出したらキリがないけど、それを口に出したらまた怒られそうな気がする。
紬は、色々尋ねたいことをグッとこらえた。
「それより、お客様ですね?失礼致しました、部屋の中へお入りください」
先ほどの態度とは打って変わり、ていねいな物腰でネコは紬を部屋へと案内した。
「あの、”お客様”って……?」
部屋への移動中、ネコの発言に引っかかった。
そういえば、表に”はつこい屋”と書かれていたが、やはりここは何かのお店なのだろうか。
「ささ、奥のソファにお座りください」
部屋の中は特別広いわけではないが、大きな本棚に、洋風のアンティークもあれば、なぜか竹刀などの洋室に似つかわしくない物も飾られている。
奥にある二人がけのソファの向かいには、一人用の小さなソファが置いてある。
そして、その真ん中には丸くて低いテーブルが設置されていた。
テーブルのすぐ上には、紬がずっと目印にしていた電球がぶら下がっていた。
紬は案内されるまま、奥のソファの方へと進み、腰をかけようとした。
しかし、ソファから何者かの寝息が聞こえてきた。
よく見ると、紬より少し年上くらいの青年がソファに寝転がっていた。
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